2019 Fiscal Year Annual Research Report
配位子交換を用いた全塗布型超高性能ペロブスカイト量子ドットLEDの開発
Project/Area Number |
19J21788
|
Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
江部 日南子 山形大学, 有機材料システム, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | ペロブスカイト / 量子ドット / 全塗布型多積層技術 / 架橋性配位子 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、長寿命かつ高効率ペロブスカイト量子ドットLED(QD-LED)を開発するため、全塗布型の多積層化技術を用いた高密度集積化ペロブスカイトQD膜の開発を目指す。1年目は、全塗布型の多積層化技術を確立するため、両末端にアミノ基を持つアルキルジアミン架橋性配位子によりQD間を架橋し、不溶化膜を形成した。 まず、アルキルジアミン添加したQD膜は、オクタンリンス前後の紫外-可視吸収スペクトルより吸収強度が変化しないことから、不溶化が確認された。また、アルキルジアミン添加により表面欠陥が補填され、発光量子収率が45%から58%まで大幅に向上した。一方、アルキルジアミン添加後も発光波長および半値幅の変化は、確認されなかった。 次に、アルキルジアミン添加したペロブスカイト QD 膜を用いて LED を作製した。素子構造は、ITO/PEDOT:PSS, Nafion/Poly-TPD/ペロブスカイトQD/TPBi/Liq/Alの構造を用いた。 EL スペクトルよりアルキルジアミン前後において発光波長 512nm が得られた。また、アルキルジアミン 添加後も低い駆動電圧を示すと共に、最大輝度も 573cd m-2 から 1460cd m-2、最大外部量子効率は、8.6%から 9.7% まで向上した。 以上の結果より、アルキルジアミン添加によるQD間架橋は、膜の耐溶媒性および発光特性を大幅に改善すると共に、ペロブスカイトQD-LEDの高性能化において非常に優れた手法であることを示した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、アルキルジアミン架橋性配位子によるQD間架橋構造を形成し、高密度集積化ペロブスカイトQD膜の開発によりペロブスカイトQD-LEDの長寿命・高性能化を行うことが目的である。実験実施計画においては、1年目に架橋性配位子を用いたペロブスカイトQD膜の不溶化と溶媒リンス処理による薄膜状態での配位子除去の手法を確立する。2年目は、配位子フリーペロブスカイトQD膜の膜厚の制御を確立する。3年目は、電荷輸送層をペロブスカイトQD膜上に塗布成膜することで全塗布型 デバイスを開発する。さらに、ペロブスカイトQD-LEDユニットを複数層用いたタンデムデバイスにより高性能化および長寿命化を目指す。 1年目は、ペロブスカイトQD膜の不溶化技術を確立したことが大きな成果であると考えている。これまで、不溶化に関するいくつかの報告がされてきたが、全塗布プロセスによる報告はこれまでなかった。本年度は、溶液状態でアルキルジアミン添加後も安定な分散を達成し、薄膜形成過程でQD間の架橋構造を形成し不溶化膜を作製した。また、アルキルジアミンが表面欠陥補填に寄与し、発光量子収率が大幅に向上した。さらに、不溶化膜に対し溶媒リンス処理を行うことで絶縁成分の過剰な配位子を除去し、デバイスの高性能化を達成した。 以上の理由より、おおむね順調に進展していると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
現状のペロブスカイトQD-LEDは、低いデバイス安定性と高電流密度領域における外部量子効率の低下(ロールオフ特性)が課題である。それらの要因に、ペロブスカイトQDの不安定な表面構造(配位子や最表面イオンの脱離)に加え、電荷バランスの乱れによる非放射失活成分のAuger再結合が発生しているためと考えられる。2,3年目では、全塗布型の多積層技術を用いてペロブスカイトQDを高密度集積化し、電荷注入/輸送性を精密に制御することで高電流密度領域における発光層内の電荷バランスの改善を目指す。 まず、ペロブスカイトQDの電荷輸送性を改善するため、絶縁成分の長鎖アルキル配位子から短鎖配位子に置換する。また、配位子置換により表面のカチオン・アニオン欠陥の補填が期待できる。得られたQD膜は、X線光電子分光法および二次イオン質量分析法による化学組成解析、時間分解分光および過渡吸収分光法による発光機構の解析、走査型電子顕微鏡および原子間力顕微鏡による膜形態の観察により評価を行う。 次に、高密度集積化ペロブスカイトQDを用いてLED素子を作製する。素子は、初期特性の評価に加え、電子/正孔のキャリア移動度を評価する。また、デバイス駆動前後の光学特性および化学組成、結晶構造の評価により素子劣化機構を明らかにし、デバイス作製にフィードバックする。 以上の研究方針にて、研究を実施する。
|
Research Products
(4 results)