2020 Fiscal Year Annual Research Report
紫外円偏光二色性によるタンパク質構造のフェムト秒時間分解観察
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19J21800
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中山 智仁 筑波大学, 数理物質科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | タンパク質 / 二次構造 / 円偏光二色性 / 超高速分光 / 深紫外パルス光 / カーボンナノチューブ / 熱電材料 / 抗体 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究代表者はこれまでに、本研究課題を遂行するにあたり必須であった定常的な円偏光二色性分光装置の構築に取り組んだ。2020年度においては、これに引き続いて、構築した光学系に超短パルス光を導入し時間分解能を付与することを計画していた。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴い、4-6月の3ヶ月間は実験装置の構築作業を実施することができなかったために、やや遅れが生じている。 一方で、装置開発と並行して取り組んでいる、本研究の測定対象のCNTやタンパク質に関する新規材料の開発や物性理解を目指した研究においては一定の成果を上げている。昨年度までに、タンパク質をCNTに吸着させることでCNTの電子状態を変調し得る可能性が示唆されたことを報告した。今年度はこれに引き続いて、その詳細な機構の解明に取り組んだ。本件は国内外の学会においてその成果を報告しており、現在論文投稿に向けて準備中である。 また、タンパク質の一種である抗体タンパク質の凝集体に関する研究も実施した。近年、その需要が急激に増大している医薬品に抗体医薬品があり、従来の低分子医薬品に比べターゲット特異性が高く、副作用が少ないことが知られている。一方で、抗体タンパク質は不安定であり容易に凝集体を形成してしまうという課題がある。この抗体の不安定性に関する研究はこれまで活発に行われてきた。しかし、これらは全て抗体のみの系で行われた凝集体形成に関する議論であり、抗体凝集体が体内に投与された際の他のタンパク質とどのような相互作用するかは明らかになっていない。そこで、本研究では人工的に抗体凝集体を作成し、他のタンパク質と混合した際の抗体凝集体の振る舞いを調査した。その結果、ある条件において抗体凝集体が急激に成長することを発見した。本研究成果は国内学会において1件の研究発表を行い、現在論文投稿に向けて準備中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究では最も重要な目標の一つとして、光誘起されたタンパク質の超高速な二次構造の変化を直接観察可能な時間分解紫外円偏光二色性分光装置(FUV-TRCD)の開発を目指している。 研究実績の概要でも述べたとおり、今年度においては開発中の装置に時間分解能を付与することを計画していた。しかしながら、新型コロナウイルス感染症の感染拡大に伴うテレワークや中国からの光学関連部品の調達の遅れ等により当初の計画よりもやや遅れが生じている。一方で、装置開発以外の研究においては想定以上の成果を上げている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続きFUV-TRCDの装置開発に取り組む。具体的には時間分解能の獲得とCNTを使った可視域での測定の実施、さらに深紫外パルス光の生成とタンパク質の二次構造の直接観察を目指す。今年度においては、装置開発と並行して実施してきた対象物質の物性解析に大きな進捗があったことから、これら得られた知見と合わせて装置開発を推進していく。
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