2020 Fiscal Year Annual Research Report
隣接位にケイ素を有するオレフィンを利用した含ケイ素環状化合物の合成とその応用
Project/Area Number |
19J21809
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
吉岡 祥平 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | ケイ素 / 不斉中心 / 金属触媒 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度は含ケイ素化合物と金属触媒による不斉ケイ素中心の形成に取り組んだ。 C(sp2)-H活性化やアセチレンによる環化付加反応を用いた不斉非対称化による不斉ケイ素中心の合成は茶谷、新谷、野崎先生らにより達成されている。しかし、これらは金属触媒による環化であり、ケイ素の特徴を用いてはいなかった。そこで我々の研究室で以前開発した新規ベンゾシレピンの合成法をもとに、ケイ素の元素特性を生かした金属触媒環化反応を基盤とした不斉非対称化に挑戦することにした。これにより、不斉ケイ素中心を持つベンゾシレピン骨格を構築ができる。さらにその後、基質に窒素を導入し、ベンゾシラアザピン骨格を合成することで、含ケイ素ベンゾジアゼピン系睡眠薬へ応用できると考えた。 まず、基質となるジアリルシラン体を4種類合成した。その基質に対して、パラジウム触媒と酢酸とホスフィン配位子を用いて、含ケイ素7員環化合物のラセミ体を合成することができた。不斉配位子と反応温度を種々検討し、すでに2%ee程度の成果を得ているところではあるが、現在、さらに触媒について検討し、片方のエナンチオマーを選択的に構築する方法を模索している。 また、研究内容とは異なる分野ではあるが、「N-保護アミノ酸を配位子として用いた 炭素(sp3)-水素結合活性化反応」について要約し、有機合成化学協会誌 “review de debut” に投稿した。2021年7月に掲載予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来、今年度中に不斉ケイ素中心を持つ7員環化合物を合成する予定であった。しかし、実際はラセミ体合成にとどまっている。様々な不斉配位子を検討し、ビナフチルホスフィン配位子を使った際に2%eeの不斉収率を出すことができたため、さらにビナフチルホスフィン配位子を種々検討している。目的とする90%eeまでかなり先が長いと感じているため、「やや遅れている」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
まず、90%ee以上の不斉ケイ素中心を持つ7員環化合物を合成する。その後、それに基づき、ベンゾシラアザピン骨格を構築する。 また、反応開発で得た研究成果をもとに、含ケイ素βラクタム環の新規合成法を開発する。そして、セファレキシンやジアゼパムにケイ素を導入した化合物を合成する。抗菌薬とその耐性菌の競争は激しく、ついに ”Drug of last resort” と言われていたカルバぺネムに対する耐性緑膿菌が誕生した。そのため、新しい抗生物質の誕生が待ち望まれている。そこで、生物が産生することのできないケイ素を抗生物質の骨格に導入すれば、細菌が含ケイ素化合物に対応できず、耐性菌の現れない薬を合成できるのではないかと考えている。
|
Research Products
(1 results)