2019 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of signal transduction mechanism for methanol-dependent gene expression in methylotrophic yeast
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19J21821
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 紘一 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 転写因子Mxr1 / メタノール濃度 / リン酸化修飾解析 / アミノ酸置換 / ドメイン探索 / アナログなシグナル伝達 / 質量分析 / 免疫沈降 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、細胞外界のメタノール濃度に応じて転写活性化因子Mxr1がメタノール誘導性遺伝子の発現を調節するメカニズムの解明を目指し、Mxr1のリン酸化修飾に着目した。これまでの研究により、Mxr1はグルコース非存在時にセリン残基が脱リン酸化され、さらにメタノール存在時にはメタノール濃度に依存してスレオニン残基がリン酸化されることが示唆されている。既知のリン酸化部位であるセリン残基のアラニン変異株を用いてメタノール誘導性遺伝子AOX1の発現量をRT-PCRにより解析した。その結果、0.01% 以下の比較的低濃度でのメタノール培養時に発現量の低下が見られ、そのセリン残基は低濃度メタノール条件下での細胞応答に重要であることが示唆された。またMxr1タンパク質を部分的に欠損させた変異体を発現させた株を用いてAOX1の発現量を解析した結果、Mxr1の369から525 番目のアミノ酸残基の欠失により0.1%以上の比較的高濃度のメタノール培養時のAOX1発現量が顕著に低下したことから、このアミノ酸領域が高濃度メタノール条件下での細胞応答に重要であることが示唆された。さらにMxr1 のあるスレオニン残基のアラニン変異株がこれと同様のAOX1の発現量の傾向を示したことから、そのスレオニン残基が高濃度メタノール応答に関与している可能性が示唆された。これらの成果は、細胞外界のメタノール濃度を細胞内の遺伝子発現に反映させるMxr1の、分子制御機構の解明の一助を担うものであり、メタノール濃度に対応する連続的な(アナログな)シグナル伝達機構のモデルを提唱する上で重要である。 Mxr1のリン酸化を質量分析によって詳細に解析するため、Mxr1を免疫沈降により精製し限外ろ過濃縮する手法を確立した。目的タンパク質が精製・濃縮されていることをSDS-PAGEゲルのCBB染色およびイノムブロットにより確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当該研究課題に関しては、概ね計画通りに進んでいる。細胞外界のメタノール濃度に依存してリン酸化レベルが変化することが示唆されている転写因子Mxr1に着目し、Mxr1のリン酸化と下流の遺伝子発現との関係の調査に取り組んだ。部分的に欠損したMxr1の発現株を用いたRT-PCRにより、メタノール濃度に応答したAOX1の発現に必要なMxr1上のドメインを特定した。本研究成果は第52回酵母遺伝学フォーラム(静岡, 2019)にて報告した。また、Mxr1のあるスレオニン残基の変異によって、メタノール培養時のAOXやDASの発現が抑制されたことから、Mxr1のリン酸化候補部位であることを見出した。さらにこれらのリン酸化部位の解析を裏付けるため、質量分析を用いたタンパク質修飾解析を検討中である。上記の結果については、日本農芸化学会2020年大会(福岡, 2020)で報告した。 また当初の研究計画では、Mxr1のリン酸化修飾について質量分析により解析する予定であったが、免疫沈降による目的タンパク質の精製において一般のプロトコールに示されている手法では収量・純度が質量分析に不十分であった。そのため精製手法の見直しを主に行い、収量・純度を改善した。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではMxr1のリン酸化がメタノール濃度に応答したAOXやDASの遺伝子発現制御に寄与するかどうかを調べるため、質量分析によるMxr1の修飾解析を前年度に引き続き行う。LC-MS/MSのためのタンパク質の精製過程を検討し、より高収量・高純度の目的タンパク質を用いて解析する。メタノール濃度に応じた遺伝子発現制御に重要なドメインとして同定された領域のうち重要となるアミノ酸残基の変異により、メタノール培地での生育や遺伝子発現に及ぼす影響についてより詳細に調べる。標的アミノ酸残基のアラニン置換に加えて、リン酸化状態を模倣したアスパラギン酸やグルタミン酸への置換体も作成し、リン酸化との関連性について解析する。 また、メタノール濃度の感知に寄与するタンパク質Wsc1, Wsc3は、培地中メタノールの枯渇時に誘導されるペキソファジーに重要であることが示唆されているため、野生型株およびWSCの遺伝子破壊株を用いてペキソファジーの進行を追跡し比較する。これらの結果を取りまとめ、農芸化学会における成果発表、論文化を目指す。
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Research Products
(3 results)