2020 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of signal transduction mechanism for methanol-dependent gene expression in methylotrophic yeast
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19J21821
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 紘一 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 転写因子 / メタノール濃度 / リン酸化修飾 / ペキソファジー / メタノール資化性酵母 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、メタノール資化性酵母において、細胞外界のメタノール濃度に応じて転写活性化因子Mxr1がメタノール誘導性遺伝子の発現を調節するメカニズムの解明を目指し、Mxr1のリン酸化修飾に着目した。これまでの研究により、Mxr1はグルコース非存在時にセリン残基が脱リン酸化され、さらにメタノール存在時にはメタノール濃度に依存してスレオニン残基がリン酸化されることを見出している。免疫沈降によって精製したMxr1の質量分析により、Mxr1のリン酸化部位を明らかにした。現在は質量分析の結果を基にMxr1のリン酸化部位変異体を作成し、これがメタノール誘導性遺伝子のメタノール濃度依存的な遺伝子発現に与える影響を調べている。さらに、複数のメタノール資化性酵母におけるMxr1ホモログとの配列比較から、Mxr1タンパク質内にはメタノール資化性酵母間に保存された6つの領域があることを見出した。これらのうちメタノール濃度に応答した遺伝子発現に寄与するMxr1のドメインを探索するため様々なドメイン欠失体発現株を作成した。各株を用いてメタノール誘導性遺伝子AOX1の発現量の変化をRT-PCRにより測定したところ、低濃度メタノール条件および高濃度メタノール条件での遺伝子発現制御に重要なドメインをそれぞれ同定した。 また、細胞表層に局在しメタノール濃度の感知に寄与するWscファミリータンパク質であるWsc1を欠損させると、メタノールが残存している場合でもペキソファジーが誘導されていること、ペキソファジーの誘導に必要なAtg30の脱リン酸化が、プロテインホスファターゼMsg5やPtp2aの欠損によって抑制されることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
概ね計画通りに進んでいる。本年度は、Mxr1のリン酸化と下流の遺伝子発現との関係の調査に取り組み、質量分析を用いたMxr1のリン酸化修飾解析とMxr1のC末端側ドメイン欠失体発現株の解析により、メタノール誘導性遺伝子のメタノール濃度に応答した遺伝子発現に重要なMxr1のアミノ酸領域およびアミノ酸残基の候補を同定した。本研究成果の一部は第53回酵母遺伝学フォーラム(オンライン開催, 2020)および日本農芸化学会2021年大会(仙台, 2021)で報告した。 また、メタノール枯渇条件におけるペキソファジーに関して、細胞表層に局在しメタノール濃度の感知に寄与するWsc1や、そのシグナル伝達の下流で働くプロテインホスファターゼが関与することを明らかにした。本研究成果はJournal of Cell Science誌に投稿、受理された。
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Strategy for Future Research Activity |
Mxr1のリン酸化レベルがメタノール濃度に応答した遺伝子発現制御に寄与するかどうかを調べるため、質量分析の結果を基にMxr1のリン酸化部位変異体を作成し、遺伝子発現に対する影響を評価する。加えてメタノール濃度依存的な遺伝子発現に重要なMxr1のリン酸化アミノ酸残基を同定する。 さらに、メタノール濃度に応じた遺伝子発現制御に重要なドメインとして同定された領域のうち重要となるアミノ酸残基の変異により、メタノール培地での生育や遺伝子発現に及ぼす影響についてより詳細に調べる。標的アミノ酸残基のアラニン置換に加えて、リン酸化状態を模倣したアスパラギン酸やグルタミン酸への置換体も作成し、リン酸化との関連性について解析する。 また、出芽酵母Saccharomyces cerevisiaeにおいて非発酵性炭素源条件での生育時に活性化されるSer/ThrキナーゼScSnf1が転写因子ScAdr1(K. phaffii Mxr1のホモログ)をリン酸化することが既に報告されている。これを基に、K. phaffiiにおいてKpSnf1がMxr1のリン酸化を担うかについて詳細に検討する。 これらの結果を取りまとめ、学会における成果発表、論文化を目指す。
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Research Products
(3 results)