2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the mechanisms underlying transmission of tau pathology along neuronal networks
Project/Area Number |
19J21850
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
西田 達 東京大学, 大学院医学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | タウ / マイクロダイアリシス / 神経活動 / プリオン様伝播 / アルツハイマー病 / 細胞外腔 / シード |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はアルツハイマー病において見られる神経回路依存的なタウ病理の伝播がin vivoレベルで神経活動依存的に亢進される分子機序について明らかにする。タウ病理の伝播は自身が凝集核となる能力を有したseedが神経細胞間を移行することで別の細胞へ病理を拡充させていくと考えられているがin vivoにおいては未だ証明されていない。そこで昨年度までにマウス脳細胞外腔空間を満たす間質液(ISF)を回収できるマイクロダイアリシス法に対し、3MDa cut-offの大孔径の透析膜、低速灌流にすることによって巨大分子量であることが想定されるseedタウの回収に成功した。 本年度は1MDa cut-offの透析膜では同じ流速でもseedが回収できないことからin vivo中seedタウはタウがいくつか重合した巨大分子サイズである可能性を見出した。また、ISF中seedタウはタウトランスジェニックマウス(PS19)の月齢依存的に増加することも示した。このメカニズムについて、少なくともタウ蓄積下ではISF中seed量の増加に十分でないこともタウ線維接種実験とマイクロダイアリシス法の組み合わせによって明らかにした。 さらに神経活動依存的にISF中seed量は上昇しないどころか、興味深いことにむしろ減少する傾向にある可能性を示唆するデータも徐々に得られてきているところである。霊枢を追加したのち、神経活動依存的に細胞外腔中へのseed放出の増加以外の経路が関わっている可能性を示唆する結果であるため、今後精査してゆく。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
生体脳におけるタウ伝播機構の分子メカニズムを明らかにするため、細胞外腔を介して病理伝播のseedが細胞間を移行するのではないかと仮説を立て、タウトランスジェニックマウス脳間質液中のseedタウを回収する系を前年度までに樹立した。この系を用いてタウ病態の進行と細胞外腔中seedタウ量の関係について調べたところ、孔径の大きな透析プローブを用いた工夫によって既報と異なる傾向を見出し、分子量が細胞外腔中のタウseed活性に重要である可能性があるという新規知見を見出した。 また以前に明らかにした、神経活動依存的なタウ病理の進展現象を説明し得る背景メカニズムとして、この間質液中seedタウ回収系で評価したところ、予想に反し神経活動依存的に細胞外腔中seedタウ量は増加せず、むしろ減少傾向にあることを見出した。当初は活動依存的に伝播が亢進しているとき、伝播を担うようなseedタウの放出も亢進されており、細胞外腔中seedタウ量は上昇していることを期待していただけに驚くべき結果である。例数を追加する必要はあるが、これらは将来的に培養細胞レベルでは明らかにされ得なかった生体内におけるタウ伝播様式に対して新規知見をもたらすことを示唆しており、次年度の結果にも非常に期待が持てる。
|
Strategy for Future Research Activity |
大孔径透析膜と低速灌流によるin vivoマイクロダイアリシス法を用いたタウトランスジェニックマウス脳内間質液中のseedタウを回収・検出する系を昨年度までに樹立した。本年度は灌流液に神経活動を亢進させるピクロトキシンを混入させて灌流と同時に薬剤投与ができるリバースマイクロダイアリシス法を用いて神経活動亢進の有無で間質液中seedタウ量が変化するか調べる。 また、上記手法によってタウトランスジェニックマウス脳内間質液中seedタウ量がタウ病理依存的に増加することもすでに示したがそのメカニズムについては未知である。そこでタウ蓄積依存的に間質液中seedタウが上昇する可能性について、タウ線維の脳内接種のちマイクロダイアリシス法を用いることで検討する。また、細胞死依存的に間質液中seedタウが上昇する可能性について、細胞障害を引き起こす薬剤(現在はピロカルピン・3-ニトロプロピオン酸を予定)を用いてリバースマイクロダイアリシス法により、比較検討を行う予定である。 以上の結果がそろい次第原著論文の執筆に移る。
|