2020 Fiscal Year Annual Research Report
Optical Levitation to Realize a Macroscopic Quantum System
Project/Area Number |
19J21861
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
川崎 拓也 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | 巨視的量子力学 / 光学浮上 / 光輻射圧 / 光学トラップ / レーザー / エンタングルメント / 量子測定 / オプトメカニクス |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、巨視的量子系を実現することにより、いまだ実験的検証が行われていないマクロなスケールでの量子力学検証、そして重力相互作用を組み込んだ量子力学の研究を行うことを目的としている。 そのための方法として、巨視的な振動子の位置測定を精密に行うことのできる機械光学系に着目し、かつ振動子としての微小な鏡を光の輻射圧のみによって支持しトラップすることで、懸架による熱的な雑音を除外し、量子効果を観測できる感度を実現する。 本年度は、まず本研究の光学浮上構成であるサンドウィッチ構成の安定性検証をおこなう実験の測定結果を精査し、サンドウィッチ構成が安定な系であることを明確化した。 また、光学浮上を実現し、振動子の変位測定感度が標準量子限界に達した系は、巨視的な量子系の研究を幅広く行うことができるプラットフォームとなる。そこで、光学浮上を実現した系の量子センサーとしての応用を考えると、標準量子限界を突破した感度を実現することも重要性である。この点を踏まえ、標準量子限界を超える感度を実現するためのスキームを実証する実験を微小な懸架鏡を用いて進めた。微小鏡により構成された高感度な線形光共振器により、測定のバックアクション雑音の回避をデモンストレーションし、バックアクションを回避した周波数帯においてディップ状に変位測定感度が向上する特徴的な振る舞いを観測した。同時に、ディップの生じる周波数が理論と矛盾ない振る舞いを示す測定結果を得た。これらの結果より、この量子雑音を低減する手法が、理論的な期待通り機能することを実証できたと言える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
鏡の光学浮上実現に向けて、本研究での構築を目指しているサンドウィッチ型構成の安定性を実証した上で、量子雑音の低減手法をデモンストレーションする実験を懸架鏡を用いて行なった。これは、振動子としての鏡の変位測定感度が標準量子限界に到達したのちを見据えて、当初の計画にはなかったが遂行したものであり、本年度に実際にデモンストレーションに成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
巨視的な量子系の実現に向けて、引き続きサンドウィッチ型構成での光学浮上を目指す。そのために、曲率つき微小鏡の開発と、浮上させるセットアップの構築を行う予定である。また、量子雑音の低減を見据えて、量子輻射圧ゆらぎの観測を目指し、懸架鏡を振動子として用いた実験も進める。
|