2019 Fiscal Year Annual Research Report
水の中での人の心―潜水活動における視覚認知機能の変容過程―
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19J21874
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
吉村 直人 九州大学, 人間環境学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 視覚的注意 / 呼吸経路 / 記憶 / 身体姿勢 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,潜水活動時という特殊環境下での認知機能の変容を多角的に解明することが目的であった。本年度は水中環境で変容しうる身体的特性に着目し,主に実験室実験にて以下の2つ点について検討を行った。 (1)呼吸経路が視覚的注意に及ぼす影響について 水中環境での活動は,装備器材の特性上,呼吸の経路を変容させることがしばしばある。本年度はこの呼吸経路の変容が我々の視覚的な注意にどのように影響するのかに焦点を当てた。実験の結果,口呼吸を行いながら活動を行うと課題の難易度が高くなるほど視覚的注意の活動に影響することがわかった。これは口呼吸が認知資源を減少させていることが示唆している。本成果は査読付き国際誌に掲載された (Yoshimura, Yonemitsu, Marmolejo-Ramos, Ariga, & Yamada 2019)。 (2)身体姿勢がシーン記憶に及ぼす影響について 水中環境では,左右に加えて上下など身体姿勢の自由度が大きくなる。このような身体姿勢はヒトの知覚的な側面を変容させることが報告されている。またシーン記憶の分野では知覚的な要素によってシーンの記憶に影響を及ぼすことが報告されている。潜水士の水中ナビゲーションにとってシーンの記憶は重要なファクターであることから,本研究では身体姿勢がシーン記憶に影響を呼ぼすのかについて検討を行った。実験では参加者に姿勢を操作(正立/股のぞき)しながら,風景写真を記憶し,その後記憶した風景を再呈示し,記憶した風景よりも接写・広角に見えるか5件法で判断してもらった。その結果,股のぞき条件の時,参加者はより接写していると記憶を誤認するようになった。これは自己受容感覚による知覚プロセスの変調がシーン記憶に影響を及ぼすことを示唆している。本成果は国内外の学会にて発表された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は,水中環境で変容しうる身体的特性に着目し,主に実験室実験にて検討を行うことで,一通りの成果を得ることができた。一方で,本研究の大きな目的である水中環境による本年度中に行うことができなかった。その理由として,本研究で用いる予定であったValtamer社製の水中用ハウジングケースの価格高騰により,予算を大幅に超えてしまったためである。そのため,当初の予定よりも水中環境での実験準備に多少の遅れが生じてしまっている。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度に生じた遅れは,当初の予定よりも大きくはないため,本年度で修正が可能であると考えている。また,前年度で行った研究会での発表などにより,水中実験における協力者のつながりを得ることができた 。そのため,本年度では,実際に潜水下での実験を行い,水中環境での認知機能の変容について研究を進めたいと考えている。
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