2020 Fiscal Year Annual Research Report
スクアレン酸化抑制に基づく食品機能維持と疾病予防:農工医連携によるアプローチ
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19J21890
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
清水 直紀 東北大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | スクアレン / 過酸化脂質 / 皮脂 / サメ肝油 / テルペノイド |
Outline of Annual Research Achievements |
スクアレンはサメの肝油やオリーブ油に含有される脂質で、抗ガン・抗心筋梗塞作用を有することから、食品由来の機能性成分として期待されている。またスクアレンはヒト皮脂の主要な構成脂質であり、皮膚を保護する役割を果たす。しかし、スクアレンはその化学構造上、非常に酸化されやすい化合物であり、スクアレンの酸化を介した食品の機能性の喪失や皮膚の老化・炎症が懸念されている。一方、スクアレンの酸化には光や熱など、種々の原因が存在するため、スクアレンの酸化の原因を解明することが極めて重要である。本研究では、スクアレンの酸化物の詳細な構造解析を通じた食品や生体中のスクアレンの酸化原因の解明を目的とし、研究を進めている。 昨年度は、スクアレンの酸化一次生成物であるスクアレンヒドロペルオキシド(SQOOH)に着目し、その詳細な構造解析を通して、酸化機構の評価を行った。試料として、スクアレンが多く含まれる食品(サメ肝油サプリメント)やヒト皮脂中を解析することで、それぞれに含まれるスクアレンの酸化機構を明らかにした。 本年度は、スクアレンの二次酸化物の解析を目的に、ガスクロマトグラフィー(GC-MS)を用いた新たなスクアレン酸化物の分析法の構築を目指した。検討の結果、固相マイクロ抽出(SPME)の活用で、スクアレンの酸化(特に、二次酸化)によって生じることが見込まれる化合物の検出が実現した。現在、食品や皮脂中のこれら酸化物を解析することを目標に、本法の完成を目指している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度までに、「SQOOHの分析法の構築と酸化機序の評価」として、食品やヒト皮脂中のスクアレンの酸化機序を評価できる一連の分析法の整備を進めた。具体的には、スクアレンが多く含まれる食品(サメ肝油サプリメント)やヒト皮脂を対象とし、それぞれに含まれるSQOOHを質量分析(LC-MS/MS)を用いて測定した。その結果、それぞれのサンプル中のSQOOHの検出が実現し、その詳細な構造解析から酸化機序の評価が可能になった。また、「酸化機序に基づく抗酸化物質の有用性の評価」として、スクアレンの酸化抑制に有効な抗酸化物質を見出すことにも成功した。 これらの知見を基盤とし、本年度はガスクロマトグラフィー(GC-MS)を用いた新たなスクアレン酸化物の分析法の構築を目指した。GC-MS分析を開始した当初は、スクアレンの標準品の酸化物や酸化させたスクアレン含有食品を有機溶媒に溶解し、分析に供する予定であったが、本法では未酸化のスクアレンの存在が分析の妨げとなり、分析が困難であることが明らかになった。そこで、有機溶媒を用いた分析法に代わる方法として、固相マイクロ抽出(SPME)を見出し、SPMEとGC-MSを組み合わせた分析法を検討した。その結果、スクアレンの酸化(特に、二次酸化)によって生じることが見込まれる化合物の検出が実現し、現在、本法のさらなる深化と完成を目指し、実験を進めている。本法が完成すれば、上述のLC-MS/MSによる一次酸化物(SQOOH)に加え、二次酸化物の解析も実現し、スクアレンの酸化によって生じる化合物の網羅的解析が可能になることが見込まれる。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、GC-MSおよびLC-MS/MSを用いたスクアレンの一次酸化物および二次酸化物の解析を行う。試料としては、スクアレンが多く含まれる食品(サメ肝油サプリメント)やヒト皮脂を想定している。また当初の計画通り、これまでに構築してきた分析法を基盤として、スクアレンと同様の部分骨格を有する他のテルペノイドの酸化物の分析も行う。以て、スクアレンをはじめとするテルペノイドの酸化制御を通じた食品機能維持と疾病予防を目指す。
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