2020 Fiscal Year Annual Research Report
ペプチド-金属の自己集合に基づく絡まりを伴う機能性球殻構造の構築
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19J21926
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
猪俣 祐貴 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ペプチド / フォールディング / 自己集合 / 絡まり / 結び目 / ゲスト包接 / カプセル / 配位結合 |
Outline of Annual Research Achievements |
絡まりを伴う球殻構造による人工酵素の構築を目指し、本年度は絡まり構造の制御に着目して研究を行った。 球殻構造側鎖を利用した金属クラスターの構築を狙って、配位性側鎖を有する球殻構造を設計した。配位性の強い官能基を有する側鎖では球殻構造が定量的に構築しない場合があったが、側鎖を1炭素増炭した配位子を再合成することで定量的に構築することに成功し、骨格と官能基の位置に対する設計指針を得た。また、意外なことに配位性側鎖を有する絡まり球殻分子は熱・希薄条件・過剰の金属イオンに対する安定性が大きく向上していることが明らかとなった。この結果は、人工酵素として球殻構造を利用する際に懸念される安定性に関する問題を改善することに繋がる重要な知見といえる。 さらに、前年度見出した単純な3残基ペプチド配位子からなる7・8交点のトーラス結び目構造について、側鎖の鎖長1つの違いで構造を制御可能であることを見出した。既に得られた構造を注意深く観察し、側鎖のかさ高さに応じて構造を拡張できるという仮説を立て、直鎖アルキル基をもつ人工アミノ酸を有する配位子を合成して同様に錯形成を行った。側鎖にエチル基をもつ配位子の場合、溶液中で見られた7・8交点の平衡が、8・9交点の平衡に変化していることが確認され、9交点のトーラス結び目を結晶として得ることに成功した。9交点のトーラス結び目を人工合成した例はなく、本成果が初の例である。また、側鎖にプロピル基・ブチル基をもつ場合は、トーラス結び目と同様の二重らせん様絡まり部分構造を有しているにも関わらず、立体障害を避けるようにしてらせんを描きながら無限に連なった超らせん構造が得られることを見出した。以上のように、アミノ酸側鎖の変更により、絡まり部分構造を保ったまま全体構造や安定性の制御に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
絡まりを伴う球殻構造における人工酵素の構築を目指す際に、球殻構造の安定性は解決すべき課題として考えられたが、その安定性向上に繋がる知見を得られたため。より巨大な交差数60の球殻構造構築の際にも適用できることが予想され、設計指針として重要だと考えられる。 さらに、昨年度予想外に得られたトーラス結び目構造についても、部分構造を保ったまま交差数の制御に成功した(第101回日本化学会春季年会発表)。一連の絡まり構造体群は、部分構造に着目するとそれらが類似しているものが多く、部分構造を保った全体構造制御の指針は絡まり球殻構造にも適用が可能だと考え、これは重要な成果といえる(論文発表準備中)。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度得られた、側鎖の性質の違いによる絡まり自己集合構造の構造制御の知見に基づき、今後は人工酵素を目指した巨大球殻構造の機能化に向けて研究を進める予定である。絡まり球殻構造の部分構造に着目し、部分構造間での相互作用の制御を側鎖や官能基に基づき行い、交差数60の[12]カテナン型カプセルを溶液中で定量的に錯形成させることを目指す。また、配位性側鎖による金属の集積に基づく分子の変換や触媒反応なども検討する。
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