2020 Fiscal Year Annual Research Report
視覚的経験の言語化に関する研究-感覚の言語的伝達メカニズムの解明に向けて-
Project/Area Number |
19J22002
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
三田 寛真 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 色彩語彙 / 色彩表現 / 色相と配色 / 単色指示、多色指示、配色指示 / 視覚的情報の伝達タスク |
Outline of Annual Research Achievements |
色彩語彙に代表される視覚関連表現について、昨年度の研究は、限定的な作例や用例を素材として、基礎理論を構築するという色合いが強かった。それに対して本年度の研究は、コーパス上の用例の網羅的な実態把捉や、実験的手法によって新規データを一から取得するといった、記述的課題に重きを置いたものであった。ただし、感染症の流行に伴い、作業の変更や保留を余儀なくされた部分も大きい。主たる成果としては(1)昨年度の分析の取りまとめにあたる論文を刊行し、(2)色彩表現の描写・指示内容としての色彩には3つの下位タイプが認められることを実例分析を通じて提示し、(3)オンラインでの代替タスクによって、色彩・形状の伝達方略の新規データを部分的ながら取得した。
(1)では、昨年度の課題から見出された、色彩の言語化における色相(色彩的特徴)の描出と配色(色の空間的配置)の描出との弁別を、論文にまとめ本年度公表した。 (2)は(1)の議論をより詳細に実例観察によって発展させたもので、色彩表現には、ある単一の色の指示する場合、複数の色のセットを指示する場合、複数の色のセットとその配置まで指示する場合の三つが区別されることを見出した。 (3)では、当初は対面での実施を予定していた、二者間による視覚的情報の伝達タスクをオンライン上で試験的に行い、その談話内に現れた色彩・形状伝達方略の様々なパターンを記述した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の計画には、対面での会話タスクによって言語データを採るという研究手法が含まれていたが、年間を通じた新型コロナウイルス感染症の世界的流行への対策の観点から、現実的に実施が難しく、オンライン上でのパイロット的な仮調査に留まった。また、既に採択されている学会発表も、2022年度への(再)延期が決まり未実施である。コーパス調査の拡充や既にあるデータの見直しなど、社会情勢と無関係に可能な作業は進めることができたが、全体としては明らかに「遅れている」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルス感染症の流行および同様の社会情勢が続いた場合、本研究の規模や施設状況から考えて、高度な感染対策をしながら対面の会話タスクを決行するといった処置は難しいため、研究の手法や対象を調整し、完全にオンライン上で行えるものだけを行う方針に切り替える必要がある。そのことで、想定しているような成果が得られなくなる可能性も十分にあるため、これまでも行ってきた、コーパス上のデータ抽出に依拠した研究手法も継続・拡充する予定である。
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