2019 Fiscal Year Annual Research Report
超解像マルチカラーイメージングを指向したオルガネラ特異的な超耐光性蛍光プローブ
Project/Area Number |
19J22014
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
梶原 啓司 名古屋大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 超耐光性 / 脂肪滴 / 脂肪酸代謝 / 蛍光脂肪酸 / STED / マルチカラー |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,超解像マルチカラーイメージングを指向したオルガネラ特異的な超耐光性蛍光プローブと,単一プローブでのマルチカラーイメージングを指向した蛍光プローブの開発を目的としている.昨年度までに,脂質代謝において重要な役割を果たす脂肪滴に着目し,超耐光性脂肪滴蛍光プローブLAQ1を開発してきた.また,多様なオルガネラが関与する脂肪酸代謝を可視化するための環境応答性蛍光脂肪酸AP-C12を開発してきた. LAQ1について,昨年度は,①STEDイメージングへの適性の評価,②マルチカラーイメージングへの適性の評価,③微小な脂肪滴の動態の長時間観察,の3つについて検討した.まず,LAQ1で染色した生細胞をSTED顕微鏡で観察したところ,光の回折限界を超えた極微小な脂肪滴の可視化に成功した.また,市販の小胞体やミトコンドリアの染色剤との共染色を行なった結果,それらのオルガネラの近傍に存在する脂肪滴をマルチカラーイメージングで可視化することに成功した.さらに,脂肪分解を誘導した脂肪細胞をLAQ1で染色し,長時間観察したところ,脂肪滴が小さくなって消滅していく様子や新たに微小な脂肪滴が生成する様子を可視化することに成功した.このように脂肪分解に一連の脂肪滴の動態を長時間追跡したのは初めての例である.これらの評価から,LAQ1が超耐光性脂肪滴染色剤として有用であることを示せた. AP-C12については,昨年度は,リポファジーの可視化を検討した.リポファジーを誘導した細胞をAP-C12で染色したところ,脂肪滴を内包したオートファゴソームと思われる構造体を可視化できた.蛍光タンパク質を用いた共染色実験や細胞内での蛍光スペクトルの評価により,実際にAP-C12で可視化された構造体がリポファジー由来のオートファゴソームであることを証明した.リポファジーを単一の蛍光プローブで可視化した初めての例といえる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では,超解像マルチカラーイメージングを実現するために,オルガネラ特異的な超耐光性蛍光プローブや,マルチカラー蛍光プローブの開発,細胞を使った性能評価に取り組んできた.これまでに,脂質代謝において重要な役割を果たす脂肪滴に着目し,超耐光性脂肪滴蛍光プローブを開発してきた.また,多様なオルガネラが関与する脂肪酸代謝を可視化するための環境応答性蛍光脂肪酸を開発してきた. 超耐光性脂肪滴蛍光プローブの開発に関しては,これまでに平面固定化した[1]ベンゾチエノ[3,2-b][1]ベンゾチオフェン-S,Sジオキシドを基本骨格とした分子を合成し,この分子が優れた耐光性と高い脂肪滴特異性,膜透過性といった超耐光性脂肪滴染色剤として優れた性質を示すことを明らかにした.さらに,この分子がSTEDイメージングでの極微小な脂肪滴の可視化に適用可能である点や,市販のオルガネラ染色剤とのマルチカラーイメージングにも適用可能である点,微小な脂肪滴の動態の長時間にわたるモニタリングを可能にする点を実証し,従来の脂肪滴染色剤に対する優位性を示すことに成功した.これらの成果に関して,論文を投稿できる段階まで到達している. 環境応答性蛍光脂肪酸の開発に関しては,これまでに3a-アザピレン-4-オンを用いた脂肪酸誘導体を開発し,この分子が細胞内で天然の脂肪酸と同様の代謝経路で代謝され,かつ代謝産物の細胞内分布を色の違いとして可視化できることを示してきた.さらに,この脂肪酸誘導体を用いて,従来の分子ツールでは可視化することが困難なリポファジーの可視化に成功した.こちらの研究成果に関しても,論文を投稿できる段階まで到達している. オルガネラ特異的な超耐光性蛍光プローブ開発と,マルチカラー蛍光プローブ開発のそれぞれに関して,論文を投稿できる段階まで到達していることから,順調に研究課題を遂行できていると判断できる.
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Strategy for Future Research Activity |
超解像マルチカラーイメージングを実現するためには,様々な波長域に対応した超耐光性オルガネラプローブが必要となる.そこで来年度は,これまでに開発した超耐光性脂肪滴蛍光プローブの長波長化に取り組む.具体的には,チオフェン環のさらなる酸化や,アシル基の導入によって,D-π-A性をより高めた分子を合成し,それらの光物性,脂肪滴染色能を評価するなかで,より長波長化した超耐光性脂肪滴蛍光プローブとして機能する分子を見出す.また,タイムラプスでのイメージングを実施するうえでは,脂肪滴に対する保持能も重要となるため,脂溶性部位を導入することにより,保持能の向上も狙う.これに加え,超解像マルチカラーイメージングを達成するためには,脂肪滴以外のオルガネラを標的とした超耐光性オルガネラ蛍光プローブも必要となるため,これらの分子の開発も実施する.具体的には,SO2やP(O)Phで架橋した平面固定化π電子骨格に種々のアミノ基を導入したD-π-A型の骨格に,オルガネラ局在性を有する官能基を導入することで,新たな超耐光性オルガネラ蛍光プローブの開発を目指す.細胞内には様々なオルガネラが存在するが,脂質代謝に大きく関与するミトコンドリアと小胞体を標的として,超耐光性蛍光プローブ開発を進める.開発した超耐光性オルガネラ蛍光プローブの候補分子に対し,光物性やオルガネラ染色能の評価を行い,最適な超耐光性オルガネラ蛍光プローブを造り込む. さらに,開発した超耐光性脂肪滴,ミトコンドリア,小胞体蛍光プローブをSIMおよびSTED顕微鏡に適用し,各プローブでの撮像条件の最適化を行う.次に,それらの色素を組み合わせて超解像マルチカラーイメージングを実施し,最適な色素の組み合わせを探る.最終的には,見出した色素の組み合わせを使って,脂質代謝におけるオルガネラ間相互作用の超解像マルチカラーイメージングを実施する.
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Research Products
(6 results)