2020 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of non-equilibrium dynamics using dynamic mode decomposition
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19J22017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
坂田 逸志 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 動的モード分解 / 緩和過程 / 非平衡 / 機械学習 / 超高速分光 / 時系列 |
Outline of Annual Research Achievements |
物理学における計測データの中でも特に非平衡現象を対象に背後のモデルを効率的に抽出する数理的手法の開発を目指して研究に取り組んでいる.本年度はコヒーレントフォノンに更に焦点を当てて,未知の現象に対する解析を進めた.コヒーレントフォノンは超高速現象を観測するためにも用いられており,プラズモンとよばれる自由電子の集団運動とフォノンの相互作用が近年注目されている.この現象は理論面で盛んに研究が進められている非エルミートハミルトニアン系として記述される.非エルミートハミルトニアンと通常のエルミートハミルトニアンとの大きな違いは固有値が複素数で現れることである.複素固有値によってエネルギーの散逸が表現されプラズモンーフォノンの結合状態の寿命が解釈される.実験データとして得られる信号は減衰振動となり,周波数・減衰率が固有値の実部・虚部に対応する.従来のフーリエ解析では減衰振動を直接取り扱うことが難しく,複素固有値を推定することができなかった.この現象に時系列信号を減衰振動に分解可能な動的モード分解を適用することによって複素固有値を直接推定した.実数の周波数空間の解析では,フーリエスペクトル解析よりもより正確な解析を行うことに成功した.また,減衰率の推定を行うことにも成功した.固有モードを選んで入射エネルギーに対する周波数,減衰率の変化を調べたところ,ハミルトニアンから計算される理論値と定性的に一致することが分かった.研究結果については,英文学会誌への投稿をめざして論文を執筆中である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は緩和現象に代表されるような,物理学における非平衡ダイナミクスを時系列データから効率的に抽出する数理的枠組みの開発を目指すものである.前年度は既に知られた対象に対して,少数のモードから構成されているというスパース性の仮定を導入することで手法の拡張を行った.本年度は未知の現象に対する解析を行うという点で進展があった.減衰振動から構成されているという仮定のみ科して,緩和過程における指数減衰の緩和率の推定を試みた.結果として,ハミルトニアンから計算される理論値との比較を行うところまで進めることができた.現在,論文投稿に向けて研究をまとめる段階にあり,順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究として,前年度の研究をまとめ英文学術雑誌への投稿を目指す.自分が扱ったフォノンープラズモン結合状態は量子干渉の問題である.量子干渉はこれまで,古典運動方程式によって理解されてきたがハミルトニアンから微視的な理解を試みるために近年非エルミート有効ハミルトニアンを用いた解析が進められている.非エルミート有効ハミルトニアンを用いた解析では固有状態を調べるのに計測信号の指数減衰を正確に知る必要がある.これまでにフーリエスペクトルの非対称などで見積もられてきたが,正確な値を推定することできなかった.自分はこの問題に動的モード分解という信号を直接減衰振動の和に分解する手法を導入することで,信号の緩和率を推定する枠組みを構築した.この成果は量子干渉の計測と非エルミート有効ハミルトニアンのモデルをつなげることになるので,今後の理論の実証に対して大きな貢献をもたらす可能性がある.より大きなインパクトのある雑誌に論文採択を目指して,解析の追加等を適宜行っていく予定である.
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