2020 Fiscal Year Annual Research Report
"Code of behavior" in the workplace: Interpersonal "tact" in magazine discourses
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19J22028
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
谷原 吏 慶應義塾大学, 社会学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | メディア史 / 情報行動 / サラリーマン |
Outline of Annual Research Achievements |
テーマ1:「サラリーマン」のメディア史 2019年度までの時点で、雑誌メディアに着目したサラリーマン史の調査研究を行い、成果を発表してきた。2020年度は、映画や書籍等のメディアも扱うと同時に、調査対象の年代も戦前期~1960年代まで拡張した。具体的には次の通り。①1950年代から60年代にかけて流行した東宝サラリーマン映画に着目し、作品群をめぐる「社会的コミュニケーション」(送り手の意図及び受容態様)を調査・研究した。その結果、50年代から60年代にかけて、職場の人間関係に関する規範の趨勢は、「家族主義」から「能力主義」へと移行していったことが明らかになった。この研究の成果は、『三田社会学』第25号(2020年11月)に査読付論文として発表し、「第68回関東社会学会大会」(2020年12月)で報告した。②戦前期における職員層に関する研究において、これまで言及されてきた同時代の統計資料及び言説資料を再検討に付すことにより、職員層の三面性―「サラリーマン」「知識人」「消費者」―が成立し得ていたこと及びその理由を明らかにした。この研究の成果は、「第93回日本社会学会大会」(2020年10月)で報告し、『ソシオロジ』第200号(2021年2月)に査読付論文として発表した。 テーマ2:現代の経済主体の情報行動 新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、関連する様々な情報がソーシャルメディアで発信・拡散されている。本研究では、特にTwitterに着目し、そのログデータ分析と、Twitter上で情報を発信・拡散する人の特徴を定量的な社会調査データから分析した。本研究の成果は、『GLOCOM Discussion Paper Series』21-002(2021年4月)にディスカッションペーパーとして既に公開しており、2021年度に国内外での学会報告を行うことが決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究全体としては、「サラリーマン」という経済主体をめぐるメディアの歴史を構想している。2020年度までの研究で、実質的な中身を構成する実証研究の部分は概ね完了したため、研究はおおむね順調に進展しているといえる。 具体的には、サラリーマンをめぐる各種統計資料や言説資料に加えて、サラリーマンを読者対象とした雑誌やサラリーマンを表象した映画等の大衆メディア及びそれらをめぐる言説を一次資料として調査研究を行った。この作業により、サラリーマンはどのようなイメージで把握されたのか、あるいは彼らはどのような情報や知をメディアに求めたのか、そしてその背後にはいかなる力学があったのかということを明らかにした。2019年度は1970年代以降、2020年度は戦前期~1960年代を主たる対象として調査研究を行った。その結果、通史としての「『サラリーマン』のメディア史」を完成させつつある。その中で特に、社会における彼らの大衆化の過程、またサラリーマン内部での差別化の過程が論点となっている。2021年度は、これまでの実証研究をメディア論や社会階層論の観点から整理・統合し、研究全体をまとめる予定である。本年度の研究の成果は、2本の査読論文として発表した。また、それぞれの論文内容に関しては学会発表も行っている。 なお、「研究開始時の研究の概要」に記載している日米比較に関する研究は、新型コロナウイルス感染症の流行により渡米が難しくなったため断念した。その代わりに、日本のサラリーマンの歴史について、当初計画より古い時代に遡って調査することにより深化を図るとともに、現代のサラリーマンの情報行動を調査する方向に研究を拡張した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、これまで実証的研究を蓄積してきた「『サラリーマン』のメディア史」について、メディア論及び社会階層論等の観点から研究全体を整理・統合し、書籍出版の目途を立てる。加えて、2021年秋までに予定されている衆議院議員選挙の時点を捉え、ソーシャルメディア(以下、SNS)を媒介とした政治コミュニケーションの調査研究を行う。 「サラリーマン」のメディア史:「サラリーマン」という言葉が誕生した大正末期から、その言葉の終焉である2000年代までを通史として記述する。サラリーマンの学歴構成や賃金構造、競争環境等、彼らの「実態」の調査だけでなく、彼らを取り巻く大衆メディア及びそれに関する言説(同時代の批評や読者投稿、製作者の語り等)を一次資料として、サラリーマンの社会的な位置付け(=「イメージ」)を明らかにすることに本研究の特徴がある。2021年度は、これまで蓄積してきたエビデンスの精査及び新たなエビデンスの追加を行うことにより、歴史記述を盤石なものとする。その上で、メディア論及び社会階層論等の観点から通史全体を整理し、統一性のある論文として書き上げる。こうした試みは本邦初であり、「サラリーマン」の「誕生」と「終焉」という時期を踏まえるならば、もう一つの「昭和史」を描き出すことになるだろう。 選挙時における政治コミュニケーション:2021年秋までに予定されている衆議院議員選挙の前後を捉え、Twitterのログデータ分析とユーザへの社会調査を行う。この研究により、Twitterのメディア効果論及び、選挙時においてSNSが人々に与える影響に関して知見を提供する。
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Research Products
(8 results)