2019 Fiscal Year Annual Research Report
Analysis of temporal coding of TAK1 using live imaging and mathematical modeling
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19J22134
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高岡 沙織 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 代謝フラックス / 数理モデル / マルチオミクス / ベイズ推定 |
Outline of Annual Research Achievements |
TAK1の時間情報コードを解明するため、①培養細胞を用いたライブイメージングデータ解析のための事前調査・予備実験を行った。またマウス肝臓マルチオミクスデータ解析及び数理モデル構築を中心に、②ローカルおよび③グローバルな観点から、代謝制御におけるTAK1の時間情報コードの解明を目指した。当初の想定に反し、①については実験系確立の困難により計画の見直しを行い、マウス肝臓マルチオミクスデータ解析及び数理モデル構築に基づく検討として②③を実施した。 ②では、代謝経路活性の定量的指標である代謝フラックスを推定するための数理モデルの構築を試みた。その結果、オミクスデータを用いて肝臓グルコース代謝フラックスを推定するベイズ推定に基づく数理モデルを構築した。本モデルはさらなるアルゴリズムの改良が必要であるが、代謝モデリングとベイズ推定を組み合わせた点で独創的な手法となっている。また肥満における代謝フラックスの変化とその制御因子を定量的に記述できる点で生物学的にも重要である。 ③では、ある代謝物に対するより網羅的な制御を調べるため、よりグローバルな代謝制御の定量的理解のための数理モデル構築に取り組んだ。代謝物と酵素タンパク質のマルチオミクスデータから、酵素タンパク質から代謝物に対する制御を定量的に評価する数理モデルの検討を行った。スパースモデリングや機械学習を用いた手法と、代謝制御の理論を組み合わせたアルゴリズムの検討を行っている。本モデルを用いることで、従来数理モデルによる解析が難しかったマウス肝臓における代謝制御において、新規の制御関係の予測につながる可能性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
①の培養細胞を用いたライブイメージングデータ解析のための事前調査・予備実験において、当初の想定に反し、使用した培養細胞でのプローブ発現・感度が不十分で、ライブイメージングでデータを取得するには条件検討が多数必要と判明した。研究期間内にデータ取得・数理モデル構築・解析まで行うには早期の実験系確立が必要だが、ライブイメージング系の確立は時間的に困難と判断した。所属研究室では、飢餓時及びグルコース刺激後時系列のマウス肝臓マルチオミクスデータを取得済である。そこでこれらのマルチオミクスデータを用いた解析・数理モデル構築を通して、定常及び時系列の代謝制御におけるTAK1の時間情報コード解析を②③により行うこととした。②ではオミクスデータを用いて肝臓グルコース代謝フラックスを推定するベイズ推定に基づく数理モデルの構築に取り組み、アルゴリズムが完成しつつある。また③では代謝物と酵素タンパク質のマルチオミクスデータから、酵素タンパク質から代謝物に対する制御を定量的に評価する数理モデルの検討を行っている。以上から、手法の変更があったものの、②③で取り組んでいる手法はTAK1の時間情報コードをはじめとする生命現象の定量的理解に有用と考えられるため。
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Strategy for Future Research Activity |
②のマウス肝臓におけるグルコース代謝フラックス推定については、数理モデルのアルゴリズムをさらに検討する。構築した数理モデルを飢餓時のマルチオミクスデータに適用し、代謝フラックスとその制御を解析する。また得られた知見について、培養細胞を用いた実験やマルチオミクスデータ解析によるバリデーションを行う。 ③のグローバルな代謝制御の定量的理解のための数理モデル構築については、数理モデルアルゴリズムの検討を行う。検討にあたり、既存のkinetic modelを用いたシミュレーションデータセットを用いた検証を行う。これにより定常状態における酵素タンパク質から代謝物への制御を定量的に記述する数理モデルの完成を目指す。さらに本モデルで得られた定常状態における制御の解析を時系列変化にも適用し、TAK1を中心とした代謝制御の時間情報コードの解明を目指す。
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