2019 Fiscal Year Annual Research Report
乾燥地植物生産における高生産・節水化に寄与する葉面結露の生理生態的効果
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19J22144
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
横山 岳 九州大学, 生物資源環境科学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 節水農業 / 水利用効率 / 乾燥地農業 |
Outline of Annual Research Achievements |
乾燥地において,夜間の放射冷却に伴う結露による葉の濡れ(葉面結露)は,頻繁に発生する現象である.また,葉面結露は乾燥地農業における農業生産における潜在的な水資源として期待されている.そこで本研究は,農業生産の基盤となる植物の生理生態機能に対する葉面結露の影響を明らかにすることを目的として研究をおこなった. 本年度は,葉面結露が植物の生理生態機能に及ぼす影響を包括的に評価するために,葉面結露が植物のガス交換(光合成,蒸散)および成長に及ぼす影響を栽培実験により評価した.葉の濡れた状態のガス交換の計測は,植物の蒸散と葉表面の水滴の蒸発を分別して評価することが市販の計測機器では困難であるため独自に構築した計測装置により計測を行った.葉面結露は特に土壌水分が不足している状況下において,葉近傍の蒸散要求度を低下させることで蒸散による水分損失を抑制し,植物の水分ストレスを軽減した.その結果,土壌水分が不足している状況下においても,光合成速度の減少が軽減された.すなわち,葉面結露は植物の水利用効率の増加に寄与しうることが明らかとなった.一方で,土壌が十分に潅水されている条件下においては,植物の生理生態機能に対する葉面結露のポジティブな効果は示されなかった.これらの結果から葉面結露は,植物の水分が不足している時はポジティブな効果をもたらし,植物が十分に水分を保持している時はネガティブな効果をもたらす可能性が示唆された.今後はこのトレードオフの関係を解明する事に注力して研究を行う予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に沿った進捗状況であり,実験は順調に進んでいる.一方で,本研究課題の実験結果の発表(論文投稿,学会発表など)が2019年度は0件であったため,2020年度は,実験を行うと同時にその成果を積極的に公表していく必要があると考える.また,本研究課題は海外におけるフィールド実験を毎年予定しているが,現在のコロナウイルスの流行を鑑みると,2020年度の研究計画を変更する必要があると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は,海外(中国)でのフィールド実験を毎年度予定していたが,2020年度はコロナウイルスの流行により実験の実施が不透明な状態である.一方で,現地でのフィールド実験は困難であるが,現地フィールドに設置しているウェザーステーションから気象情報および葉面結露の発生状況に関するデータは入手可能である.そこで2020年度は,これらのデータからシミュレーションによる研究を行う予定である.
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