2019 Fiscal Year Annual Research Report
高次元データにおける平均, 分散共分散行列の縮小推定
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19J22203
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
湯浅 良太 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 数理統計学 / 縮小推定 / ランダム行列理論 / 高次元統計 / 統計的決定理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度は主に, 高次元の行列正規分布の平均行列の推定問題に関しての研究を行った. 平均行列の推定では, 推定の精度を高める手法として標本分散共分散行列の逆行列を用いた縮小推定量が知られている. 高次元の場合にはこの逆行列が存在せず, この推定量を用いる事は出来ない. そこで, リッジ型の逆行列を用いた縮小推定量を考え, 以下の3点の理論的結果を得ることができた. 1、縮小係数が定数である場合のリスクの不偏推定量を求め, これに基づいて, 縮小係数が定数のケースでミニマックス性を満たす為の十分条件を導出した. 2、このリスクの不偏推定量を最小化するようにデータに依存した縮小係数の推定量を求め, この推定量を用いた時のミニマックス性の十分条件を導出した. この結果は, 高次元の場合も含めて提案推定量が推定精度を高めることを示している. 3、さらに漸近論的な枠組みで推定量の最適性を示した. 具体的には, この縮小係数の推定量が真の平均に各列の平均が同じである行列正規分布を事前分布として仮定した下での縮小係数の最適な推定値と漸近的に一致することを, ランダム行列理論を用いて示した. さらに, 数値実験により, いくつかの先行研究での推定量と比較をし, 提案推定量の有用性を確認した. 以上の研究の成果を論文にまとめ, 国内外の学会で発表した. さらに, 国際学術誌 Journal of Multivariate Analysis に投稿し改訂の後に受理された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
高次元の行列正規分布の平均行列の推定問題において, 漸近理論と有限標本のそれぞれの枠組みで良さを持つ推定量を導出することができた. これらの結果を国内学会である統計関連学会連合大会や国際学会であるCMStatistics2019で発表を行い, コメントをもとに結果を洗練させることができた. 得られた結果を国際学術誌であるJournal of Multivariate Analysisに投稿し, 改訂を経た後に受理された.
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Strategy for Future Research Activity |
これまで行った高次元の行列正規分布の推定問題では, 高次元の場合に対応するために, リッジ型の逆行列を用いた縮小推定量をした. リッジパラメータの選択に関して自由度を持たせた上で縮小係数の推定量の漸近的な最適性や有限標本でのミニマックス性等を示した. 数値実験を行った所, リッジパラメータをどのように定めるかが推定精度に大きく影響を与えることが分かっている. そこで, さらに階層構造を持たせた上でベイズ推定量としてリッジ型の逆行列を含んだ推定量を導出することによりリッジパラメータに関しての研究を進める. また, 時系列構造を考慮した推定量の導出を考える. 先行研究として, Engle, Ledoit and Wolf(2019)が時系列構造を考慮した場合の共分散行列の推定量をランダム行列理論を用いて導出している. こうした研究で用いられている手法を平均と共分散行列の同時推定問題に対して用いる.
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Research Products
(4 results)