2020 Fiscal Year Annual Research Report
高次元データにおける平均, 分散共分散行列の縮小推定
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19J22203
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
湯浅 良太 東京大学, 経済学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 数理統計学 / 縮小推定 / ベイズ統計 / 統計的決定理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
当該年度も行列正規分布の平均行列の推定問題に関しての研究を行った. 採用1年目で行った研究では, 分散共分散行列を既知として仮定していた. これは過去のデータなどが豊富にあり, 分散共分散行列を十分に精度よく推定できるような状況を想定していることになる. しかし, 実際には, データが十分でない場合があったり, そもそもどれだけのデータがあれば十分に精度よく近似できているのかという問題があったりと, 分散共分散行列も未知として平均と同時に推定するものとして扱う方がより現実的と言える. そこで, 当該年度の研究では分散共分散行列が未知の場合の研究を行い, 主に次の2点の結果を得た. 1、採用1年目に提案した推定量の形に対応するような一般化ベイズ推定量を分散共分散行列が未知の場合に導出した. これは, Maruyama and Strawderman (2005)によるベクトル平均の推定問題での事前分布の行列の場合への拡張を行ったものである. これはTsukuma (2009)の議論をもとに行った. 2、さらに導かれた推定量の理論的性質の保証として, 通常のスカラー型の二乗損失, さらに行列型の二乗損失のもとでのミニマックス性を示した. これは, Konnno (1990,91,92), Tsukuma and Kubokawa (2020)などの結果を用いることにより行った. 一般化ベイズ推定量のミニマックス性の証明ではこれらの条件を用いてもミニマックス性を実際に証明することは通常困難であるが, それは主に積分を含む形で推定量が提案されることにある. 今回導出した推定量では積分を含まず, 先行研究の結果を用いてミニマックス性を示すことができた. さらに, 同様の議論を共分散行列に対しても行うことを検討しており, これらの結果を論文にまとめている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
行列正規分布の平均行列の推定問題で, より現実的な状況として分散共分散行列が未知の場合を考え, その場合にこれまでに分散共分散行列が既知の場合に得た推定量に対応するような一般化ベイズ推定量を得ることができた. 平均行列の推定では数値積分を必要としない一般化ベイズ推定量はこれまで得られていなかった. 今回得た推定量は数値積分を必要とせず計算が容易である. この結果は統計関連学会連合大会等で発表を行うことができ, さらに分散共分散行列の推定に関しても同様の計算を行い, 現在論文にまとめているところである.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究では, 高次元の場合に対応するために, リッジ型の逆行列を用いた縮小推定量を導出した. その推定量の漸近的な最適性や有限標本でのミニマックス性等を示した. まずは, 階層構造を持たせた上で一般化ベイズ推定量としてリッジ型の逆行列を含んだ推定量を導出することによりさらに予測問題等についての研究を進める. すでに昨年度までで, Maruyama and Strawderman(2005)によるベクトルデータの場合の研究をもとに, 行列データの場合に一般化ベイズ推定量としてリッジ型を含む推定量を得た. さらにこの推定量のミニマックス性も示した. 本年度はさらに, Maruyama and Strawderman (2012,2014)によるベクトルデータの場合の予測の問題まで拡張した形で研究をもとに, 行列データでの予測問題等の研究を進める. 行列の非可換性等により, より困難な問題になるが, これまでに行った研究上で得た結果やTsukuma and Kubokawa (2016)での手法を用い, 予測問題として適した推定量を導出し, 理論的研究を行う. また, 時系列データを含む複雑な構造を持つデータに対する推定量の導出を行う. これらの構造を活かすために関連した研究として, ランダム行列理論を用いたものやテンソル構造に対する統計モデルに関するものがある. これらは共分散の推定のみを行っていたり, 時系列構造を十分にとらえていなかったりする. これらそれぞれをもとに, よりポートフォリオ選択等で有用な推定量を導出し, 数値的に性能を評価する.
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Research Products
(2 results)