2019 Fiscal Year Annual Research Report
固体電解質を用いた全固体電気二重層トランジスタにおけるキャリア注入機構の解明
Project/Area Number |
19J22244
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
高柳 真 東京理科大学, 理学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 電気二重層トランジスタ / 全固体 / ダイヤモンド |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は固体電解質を用いた全固体電気二重層トランジスタ(EDLT)の動作メカニズムの解明、適する固体電解質種の選定である。現在までに多く報告されている電解質にイオン液体を用いたEDLTは、メカニズムの解明が進んでいるが、工業的な応用に対しては他の電子デバイスとの両立性の面から電解質に液体ではなく、固体を用いた全固体化が望まれる。しかし、固体電解質は液体電解質と異なり、イオンの持つ電荷と電子の持つ逆電荷の結合による中性化、すなわち電荷補償が電解質内部で起こりやすい事が知られている。そのため、電解質に液体を用いたモデルをそのまま固体に適用することは望ましくない。固体を用いたEDLT独自のメカニズムの解明が必要である。また、全固体EDLTの動作に適する固体電解質種の選定は、工業的な応用に対しても非常に価値が高く、本研究は今後の全固体EDLTの研究における固体電解質種選択の新たな指標になる。 本年度は、全固体EDLTの作製に使用する各層の有望な系の探索、成膜条件の最適化、及び電気特性の評価を行なった。チャネルには化学的に安定なダイヤモンドを用い、その表面を水素終端化することで伝導性を持たせた。固体電解質としては、リチウムイオン伝導性の酸化物薄膜に着目し、デバイスへの応用が可能な伝導度を有する酸化物薄膜の成膜ができた。ホール測定、ドレイン電流のゲート電圧依存性の測定より、動作評価を行った。負のゲート電圧印加時、EDLTはホールキャリア密度、ドレイン電流の増加、この変化率は電解質にイオン液体を用いたEDLTの結果に匹敵するものであった。一方、電子の授受が生じやすい元素を含んだリチウム伝導性固体電解質を中間層に用いたEDLTでは、変化率は非常に小さかった。これは水素終端ダイヤモンド/固体電解質界面で電荷補償が生じ、電気二重層効果が抑制されたと推測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、ダイヤモンドの水素終端化の条件の検討、フォトリソグラフィー等を用いたメタルマスクでは作製困難な微小ギャップ作製の条件の検討、全固体EDLTの作製と電気特性の評価について本年度一杯を予定しており、そのペースを鑑みると概ね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
電気特性に基づくキャリア注入の観察のみでは、水素終端ダイヤモンド表面に電気二重層が形成されているとは結論できない。そのため次年度は予定通り、その場観察が可能な光電子分光測定や電子線ホログラフィを用いた測定を併せてトランジスタの電位分布の解析を行う。以上より、固体電解質を用いた場合でも電気二重層が形成されることを明らかにする。
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