2020 Fiscal Year Annual Research Report
現代日本の政党による候補者リクルートメントに関する実証的研究
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19J22280
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西村 翼 神戸大学, 法学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 政治的リクルートメント / 政党政治 / 日本政治 / 議員行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、どのような属性を有する議員が擁立されやすいかを説明するこれまでの研究についての成果報告、どのような政策的立場を有する議員が擁立されやすいかを明らかにする課題1、議員の属性と政策的立場によって得票率を説明する課題2、議員の属性によって議場投票における造反を説明する課題3からなる。 まず、これまでの研究では、地縁(選挙区出身であったり地方議員の経験を有する等の選挙区とのつながり)を有する議員がどのような場合に擁立されやすいかを分析した。この研究は昨年度中に『年報政治学』誌に投稿し、本年度に採択され、2020年2号に掲載された。 次いで、課題1について、議員の政策的立場を測定するために用いる選挙公約データの整理を行った。次年度以降、このデータに対して量的テキスト分析(文章から量的な情報を取り出す手法群)の手法を適応し、政策的立場の測定に取りかかることが可能な状態である。また、課題2においても同様にして測定した政策的立場を用いる予定である。 課題3についても分析を進めた。当初の計画では議場投票における造反を分析する予定だったが、日本においては議場投票における造反例が少ないため、他の政策活動に注目することが妥当であると考えた。具体的には、選挙区との地縁を有する議員ほど、特定の地理的範囲に対して便益を供与する傾向にあるとの仮説を、議員の委員会発言に量的テキスト分析を適用して分析した。この分析については、2020年9月に行われた日本政治学会において口頭報告を行った。また、因果関係を明らかにするために強力な回帰不連続デザインと呼ばれる手法を用いて属性が政策活動(具体的には選挙区への補助金配分)に与える影響を検討した分析も行った。この分析結果は、2021年5月に開催される日本選挙学会にてポスター報告を行うことが決定済みである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の研究計画はこれまでの研究の成果報告と課題1から3までで構成されるが、進捗状況は順調である。 まず、地縁を有する議員がどのような場合に公認されやすいのかを検討し、成果報告を行っていたこれまでの研究は、『年報政治学』誌の査読を通過し、2020年2号に掲載された。これをもって、これまでの研究の成果報告は無事に完了した。 また、擁立される議員の政策的立場について検討する課題1、議員の地縁や政策的立場と得票率の関係を検討する課題2についても順調な進捗を見せている。この課題1、2においては、どのように議員の政策的立場の測定するかが重要である。本年度は、この議員の政策的立場の情報を取り出すために用いる選挙公約データの整理を行った。選挙公約データの整理は順調に進展している。これにより、次年度以降速やかに議員の政策的立場のデータを構築し、課題1、課題2の分析に移行できる状況である。 また、今年度は議員の地縁と議員行動の関係について検討する課題3について大幅な進展を見せた。具体的には、地縁と議場での発言の関係を分析した。その成果報告として、日本政治学会2020年大会での口頭報告を行った。さらに、地縁と選挙区への補助金配分の関係について、回帰不連続デザインというより厳密な手法を用いた分析を行った。また、その成果報告として、日本選挙学会2021年大会にてポスター報告を行うことが決定している。したがって、課題3について残すは査読誌への投稿・掲載のみとなっている。 以上のことから、課題3を筆頭にいずれの課題についても進捗があり、総じて順調に研究が進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、課題1の分析、課題2の分析、課題3の成果報告、これまでの研究成果の総合を行う。課題1、課題2については、共に分析、学会報告を経て査読誌への掲載を目指すが、場合によっては、課題1と課題2の内容は1つにまとめて成果報告をすることもあり得ると考えている。 まず、課題1の分析である。「8.現在までの進捗状況」に記載の通り、政策的立場の測定に用いる公約データは整理が進んでいるため、分析は早急に完了できるものと考えている。具体的には、接戦度等の選挙区レベルの要因によって擁立される候補者の政策的立場を説明する分析を行う。 次いで、課題2についても分析を行う。こちらも課題1と同様に政策的立場を公約データから測定し、その上で候補者の地縁と政策的立場によって得票率を説明する分析を行う。政策的立場以外のデータは揃っているため、迅速に分析が完了できるものと見込んでいる。 課題3については、2020年度で分析は概ね終了している。その成果報告として日本選挙学会2021年大会にて報告することが決まっており、この場でフィードバックを得る。その後、フィードバックを踏まえて査読誌への投稿、掲載を目指す。 最後に、ここまでの研究を総合し、知見をまとめることを目指す。具体的には、公認される候補者の属性を説明したこれまでの研究、公認される候補者の政策的立場を説明する課題1により、公認される候補者の特徴を規定する要因を明らかにする。また、課題2と課題3の分析は本研究の前提を確認し、頑健な知見を提供する。
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