2019 Fiscal Year Annual Research Report
高速フーリエ変換CARSスペクトラルイメージングによる術中迅速がん診断法の開発
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19J22353
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木下川 涼 東京大学, 理学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ラマン / CARS / FT-CARS / 高速イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の広帯域Raman顕微鏡の課題点である測定速度の低速性を解決するため、 12 kHzで走査する高速レゾナントスキャナを用いたポンプ-プローブ光の光路差の生成、2D-ガルバノスキャナを用いた測定サンプル上のレーザー走査による、高速広帯域フーリエ変換CARSスペクトラルイメージングシステムの構築を行った。 本手法の実証のため、二種類のビーズ(PS, PMMA beads)の同時イメージング,生細胞(Haematococcus lacustris)のイメージングを行った。高速フーリエ変換CARSで得られたラマンスペクトルは従来の自発ラマン法によって得られるスペクトルとよく一致しており、本研究で開発した高速フーリエ変換CARS顕微鏡が信頼に足ることを示している。これらの結果をJournal of Raman Soectroscopy誌に投稿した。 本研究の次のステップとして、装置の感度を上げ測定可能な対象を広げるために、4f-パルス整形器を構築し、高速フーリエ変換CARS顕微鏡に導入した。このパルス整形器はSpatial light modulator (SLM)と金コーティング回折格子、リンドリカルアクロマティックレンズを組み合わせものであり、パルス整形器全体の光利用効率55 %を実現した。 本装置を用いて、サンプル位置に置いたBBO結晶によるSHG信号強度に基づいたパルス整形を行うプログラムの開発も行った。これにより、SLMのパラメータが最適化され、系全体の二次、高次の分散の補償が実現された。パルス整形前後でのCARS信号強度の比較を行い、このパルス整形により信号雑音比が約十倍向上されたことが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
指紋領域をカバーする、高速広帯域フーリエ変換CARSスペクトラルイメージングシステムの構築、実証、論文の投稿を完了した。また、4f-pulse shaperの構築、光利用効率の向上、パルス整形用のプログラムの自作と実証により、二次、高次の分散を補償し、CARS信号の信号雑音比の約十倍の向上を実現した。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナウイルスによる緊急事態宣言下では、自宅にてCARSを含むRAMANや、他の非線形光学過程に関する理論の学習、研究を行う。また、本研究で開発しているFT-CARS spectral imagingシステムの、他の非線形光学過程の信号を同時測定可能とするアイデアの考案、デザインの設計を進める。更に、分子振動に由来するFT-CARS信号は、がん組織以外の生物細胞や他の測定物質からも検出可能であるため、がん組織以外の応用対象の検討も行う。 緊急事態宣言の発令終了後は、大学、学部学科、研究室のルールを遵守したうえで以下の実験を進める。 昨年度の研究で10倍以上の感度の向上を実現したFT-CARS spectral imaging systemをフローサイトメトリー(FCM)中を流れる細胞にも応用できるよう、alignmentを進める。流れる細胞でも歪みのないイメージを取得できることをゴールとする。がん組織細胞あるいは他の生物細胞のFCM中のイメージング、得られたデータ解析を行う。
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