2019 Fiscal Year Annual Research Report
大正・昭和前期における知識人のネットワーク―一匡社『社会及国家』を中心に
Project/Area Number |
19J22379
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
菊池 信太朗 京都大学, 文学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 知識人 / 雑誌 / 選挙 / 南洋 |
Outline of Annual Research Achievements |
一匡社は、大正期に第一高等学校、東京帝国大学の卒業生らによって創立された同窓会的な組織であり、昭和戦前期に至るまで同人雑誌『社会及国家』を継続して発行した。そこでは、大学卒業後に政官財の各界に進んだ卒業生が様々な社会問題や時事問題について自説を開陳し、議論を戦わせた。のみならず、そこでの議論を底じきとして現実の政策決定に働きかけることもあった。たとえば、新聞記者として主に選挙にかかわる問題について論陣を張った関口泰や立憲政友会所属の代議士・山口義一らが中心となった貴族院改革などがそれである。また、紙上の議論や政治への関与だけでなく、一匡社として別荘地を開き、メンバーがそれぞれの得意分野の講義を行う「夏期大学」を開催するなど、レクリエーション兼民衆への啓蒙を意識した団体でもあった。 本研究では、そうした一匡社の活動に注目し、1920年代から1940年代にかけての知識人の活動と社会とのかかわりを明らかにするものである。2019年度においては、前述の先述の選挙と政治にまつわるトピックの調査を行うとともに、もう一つのトピックとして、1930年代に現れた南洋論についての調査を進めた。その結果として、選挙論については、『社会及国家』誌上での議論が山口の政策提言に結びついていることが推察できた。この結果は現在論文化を進めている途上である。また、南洋論については、当時の南洋ブームの中での位置づけを探るため、継続した調査が必要である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2019年においては選挙論と南洋論という、一匡社が取り上げたトピックのうちの二つを対象に調査と分析を進めた。国立国会図書館東京館や東京都立図書館での文献資料を対象とした調査を進めるとともに、東京都小笠原村において現地調査を行った。結果として、選挙論については修士課程での研究成果と合わせて論文を執筆中である。また、南洋論については継続して調査が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も南洋論についての調査を行っていきたい。また、南洋論の調査がひと段落したのちには、女性問題や産児制限の問題についても取り上げる予定である。その際にも、文献調査を基本としつつ聞き取りなどの手法も取り入れていこうと考えている。また、他の団体との比較を行う予定である。
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