2019 Fiscal Year Annual Research Report
高線量場計測を目指した近赤外発光シンチレータの開発
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19J22402
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Research Institution | Nara Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
赤塚 雅紀 奈良先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | シンチレータ / 近赤外 / 単結晶 / 高線量 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では高線量場計測応用を想定した新規近赤外発光シンチレータの開発を目的としている。2019年度はレーザー分野などで盛んに研究が行われているペロブスカイト構造を持つ単結晶をホストとし、発光中心として近赤外域に発光遷移を持つTmやNdなどの元素を選択・最適な添加濃度の検討を行うことで、近赤外域で高い発光効率を有するシンチレータの開発を行った。YAlO3をホストとして、PrやHo、Er、Tmといった近赤外域に発光遷移を持つ元素を発光中心として添加した単結晶を作製しシンチレーション特性を測定したが、結果的に高い発光効率を持つシンチレータは得られなかった。またその他にもNdを添加したCaSiO3, SrSiO3, BaSiO3単結晶を作製した。放射線検出器としての特性は1mGyから10Gyの広い範囲の線量応答特性を示しており、この結果は現在報告されている近赤外発光シンチレータの中でも一番性能が高いものと同等であることを明らかにした。これらの研究結果を取りまとめ、国内外で開催された学会に積極的に参加し、ポスター及び口頭発表を行い、主著論文として3編投稿した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は高線量場計測を想定した新規近赤外発光シンチレータの開発を目的としている。これまでレーザー分野などで盛んに研究が行われているペロブスカイト複合酸化物やバナジウム複合酸化物に着目し、近赤外域で高い発光効率を有する単結晶シンチレータの材料探索を行ってきた。また実際の高線量場計測を想定して1時間辺りの線量率を10秒で計測できる測定システムを立ち上げた。この計測系を用いてこれまでに作製したサンプルの近赤外シンチレータとしてのデバイス特性を測定したところ6 mGy/h~60 Gy/hの範囲で線量率の計測に成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
技術面における当初の目標は1 mGy~10 Gy/hの範囲で線量率が計測可能な近赤外発光シンチレータの開発なので、更に低い線量率まで測定可能にするため、引き続きホストとなる単結晶の材料探索や発光中心の最適化、測定システムの改良を行っていく。また学術的な観点からは、三年間における研究を通じ、実際に作製した化合物数分の科学・物理的データを蓄積し、化学組成と光物性及び放射線応答特性についての相関性や規則性を考察する。これまで複合ペロブスカイト構造を持つ単結晶やバナジウム酸化物単結晶を母材とした近赤外発光シンチレータを作製してきたので、それらのシンチレーション特性の傾向をまとめ、今後の近赤外シンチレータの設計において参考になるような指標の可能性までを示し、自身の論文としてまとめる。
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