2020 Fiscal Year Annual Research Report
窒素/フッ素共ドープ酸化チタン光触媒を用いた高効率可視光水分解系の構築
Project/Area Number |
19J22433
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
三好 亮暢 東京工業大学, 理学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 光触媒 / 水分解 / 可視光利用 / ドープ / 複合アニオン化合物 / 窒化反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、未だに報告例の少ない3種複合アニオン化合物の光触媒機能を粒子サイズ、結晶構造、励起キャリアダイナミクスという多角的な観点から検討し、さらなる高活性化に必要な指針を明らかにすることにある。本年度は、窒素/フッ素共ドープTiO2 (TiO2:N,F)のさらなる光触媒活性向上を目指し、合成条件(TiO2前駆体、窒化温度、窒化時間、フッ素源濃度、NH3流量)のさらなる最適化を行った。特に、昨年度の検討で、TiO2:N,Fの粒径を80 nm程度まで小さくすることによって活性を向上できたことから、本年度はさらなる微粒子化を試みた。これらの結果、適切な粒径と結晶性を有するTiO2を前駆体として用いることが重要であることが示唆された。最適化したルチル型TiO2:N,Fを用いたZスキーム水分解系の活性は、既報のバルク型TiO2:N,Fを用いたもの (Sustainable Energy Fuels, 2018, 2, 2025)に比べて6倍まで向上し、代表的なO2生成光触媒であるBiVO4を用いた類似の系の活性に迫るものであった。また、アナタース型TiO2:N,Fの合成検討も行い、アナタース型TiO2:N,FもZスキーム水分解系において、可視光照射下でO2生成光触媒として機能することを明らかにした。 また、実験的な検討が進んでいるルチル型TiO2:N,Fにおいて、計算科学を用いた検討を進めた。わずかな量でもフッ素を添加することでTiO2:N,Fの生成エネルギーを大きく低下させることができることを明らかにした。さらにこの知見をもとに、フッ化物を用いたGaN-ZnO固溶体類似化合物の低温での合成法も開発した。 得られた成果は、学会や論文で適宜発表した。また本研究成果も含めた複合アニオン光触媒に関する総説も執筆し、オープンアクセス論文として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初計画で掲げたTiO2:N,Fにおける光触媒活性を支配する因子を粒径・結晶性・結晶構造・励起キャリアダイナミックスという多角的な観点から明らかにしつつある。特に、研究課題において計画していた粒径効果の検討では、詳細な合成検討を行うことで光触媒活性を従来の6倍にまで向上させ、代表的なO2生成光触媒に迫る活性を得ることに成功している。また、ルチル型とアナタース型の2種類の結晶構造を有するTiO2:N,Fの合成に成功し、どちらもZスキーム水分解系において、O2生成光触媒として機能することを明らかにした。本年度は、計算科学を活用した研究も併せて行ったことで、コロナ禍で実験の縮小を余儀なくされたものの当初計画以上の成果をあげることができている。また、計算科学で明らかにしたフッ素による窒化反応の促進効果を利用することで、GaN-ZnO固溶体類似化合物の低温での合成にも成功しており、窒素/フッ素共ドープの手法をさらに発展させた光触媒材料の合成手法も開拓できている。光触媒活性の向上・活性制御因子の解明・フッ素添加効果の解明について当初計画が順調に進展し、それ以外の発展的な成果もあげられていることから当初計画以上に進展していると評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、高活性を示すことが明らかとなったナノ粒子型TiO2:N,Fを中心に、多形効果の検討を行う。また、TiO2:N,F表面を助触媒等で修飾することによる活性の向上も試みる。これらを通して、可視光および疑似太陽光照射下で駆動する水分解系のさらなる高効率化を目指す。
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