2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19J22442
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
金城 那香 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | アルツハイマー病 / APP-βCTF / 小胞輸送障害 / リピッドフリッパーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
アルツハイマー病(AD)は進行性の認知障害を呈する神経変性疾患で,脳内アミロイドβ(Aβ)の凝集が主要な発症要因であると提唱されている.これまで,Aβを標的とした治療薬が開発されてきたが,凝集Aβによる副次的毒性が問題となり,有効な効果が得られていないと考えられている.そこで,Aβ凝集以前のより早期にADを防ぐことが望まれている. 近年,AD初期病態として,Aβの前駆体であるAPPカルボキシル末端断片・βCTFが脳内で蓄積し,小胞輸送障害を引き起こすことが注目されている.しかし,その分子機構は明らかでなく,治療薬の開発は頓挫している.申請者らはこれまで,孤発性ADに深く関与し,βCTF産生酵素であるβセクレターゼ(BACE1)について,ADモデル細胞系を樹立し、βCTFによる小胞輸送障害に脂質輸送関連因子・TMEM30Aが関与すること,両者の結合がエンドソームの肥大化(輸送障害)を引き起こすことを明らかにしている.TMEM30Aはリピッドフリッパーゼの構成因子で,脂質二重膜におけるリン脂質の細胞質側への輸送を制御し、この機能は小胞輸送に必須である。申請者は、本モデル細胞系において、生化学的手法及び、split-luciferaseを応用した新規測定系を用い,TMEM30A/βCTFの複合体形成によるリピッドフリッパーゼの機能低下がAD特異的小胞輸送障害に関与することを新たに示した.さらに,輸送障害を改善しうる候補化合物を本モデル系に処理し、リピッドフリッパーゼの機能及び、エンドソームの肥大化が改善されることを明らかにし、治療標的となる分子を見出した.今後、Aβ蓄積以前のADモデル動物において、リピッドフリッパーゼの機能低下による小胞輸送障害及び、候補化合物の検証に着手している.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は,これまで樹立されたAD初期病態である輸送障害のモデル細胞系を用いて,AD発症機構の解明・小胞輸送障害に対する治療標的分子の同定を目指して研究を行った. その結果,脂質輸送因子リピッドフリッパーゼの活性低下が関与すること及び、リピッドフリッパーゼ機能回復に伴い, エンドソームの肥大化が改善されることを明らかにし, リピッドフリッパーゼを新規治療標的として見出した. これまで,小胞輸送障害がAβの蓄積を引き起こすという“traffic jam” 仮説が強く提唱されてきた一方で,そのメカニズムは明らかでなく, 治療薬の開発は困難であった.申請者による本研究成果は,脂質二重膜において脂質の局在を制御するリピッドフリッパーゼの機能が関与するという,本仮説のメカニズムの提示及び、その機能改善は治療標的となりうる可能性を示しており,新規AD根本治療薬の開発に大きく貢献出来ることが予想される.以上,本研究は当初の予定通りに進展しており,今後の研究に大いに期待できるものである.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度はAD初期病態のメカニズム解明・治療標的の同定に尽力した.今後は,モデル動物において小胞輸送障害を定量評価出来る測定系の確立及び,候補化合物の効果を調べていく予定である.以上のことから得られた成果は,論文・学会で発表する予定である.最終的には,小胞輸送を標的とした新規AD特異的治療薬の開発を目標としている.
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Research Products
(1 results)