2020 Fiscal Year Annual Research Report
山地性植物における標高上下間の遺伝的分化とその維持機構の解明
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19J22443
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
田路 翼 信州大学, 総合医理工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 遺伝的分化 / 標高上下 / 送粉 / 集団遺伝学 / MIG-seq / マイクロサテライト / 山岳 / 生態型 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は幅広い標高帯に分布する植物種内において、標高上下間で遺伝的な分化が生じているかを検証することにある。Itino & Hirao(2016)のレビューによれば標高上下といった系で遺伝的交流の実態を検証した研究はわずかな例しかない。本研究はあまり研究の進んでいない山地性植物の遺伝的な実態を一挙に解明しようとするものである。現段階では、1つの山系内の幅広い標高帯に分布する約40種の植物が研究対象としてリストアップされている。それらの植物を対象に、マイクロサテライトマーカーやサンガー法による塩基配列解析を検討する。またMIG-seq法(Suyama & Matsuki 2015)とよばれる、非モデル生物でもゲノムワイドSNPs(一塩基多型)が可能な手法を用いて、様々な植物種内の標高上下間の遺伝的交流の実態を解明する。その後、標高上下間の遺伝的分化が見られた植物において、遺伝的交流がどのようにして制限されているのかを明らかにする。 これまでで、合計約6000個体から植物標本を得て、ほぼすべてのサンプルのDNA抽出を終えている。これまで、サラシナショウマ、オドリコソウ、ナギナタコウジュの遺伝解析を終え、論文化を行った。順次、さらなる植物種の解析に取り組んでいるところである。また、キツリフネ、ウツボグサ、キバナノヤマオダマキの3種の植物において、パイロット的にMIG-seqの解析を行い、十分な量のゲノムワイドSNPsの遺伝情報を得ることができている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度中までで約6000サンプルと、かなりの規模の植物標本を採取し、DNA抽出まで進めることができた。解析予定の約40種類の植物種のほとんどで十分な地点のサンプリングができている。また、キツリフネ、ウツボグサ、キバナノヤマオダマキの3種類の植物においてMIG-seq解析で十分な量の遺伝情報が得られ、現在では論文化を行っているところである。 すでに遺伝解析が終えられたサラシナショウマ、オドリコソウ、ナギナタコウジュの結果は論文化しており、順調に成果をアウトプットしている。
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Strategy for Future Research Activity |
生態的データと遺伝解析のデータを組み合わせて具体的な議論が可能な、野外データの取得ができている植物種の遺伝解析を優先的に行っていく。候補として挙げられるのは、ラショウモンカズラ、ヤマホタルブクロ、ツリフネソウである。特にこの3種の植物について集中的に訪花昆虫や花形質などの野外データをそろえることができている。また、約6000個体の植物のほとんど全てからDNA抽出は終えているため、順次、遺伝解析を進めていける準備は整っている。 解析を終えた植物の論文化を優先して行い、論文のアウトプットと大量サンプルの遺伝解析をバランスよく行っていく。
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