2019 Fiscal Year Annual Research Report
木質バイオマスを由来とする新規多孔体の開発と透明断熱材への応用
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19J22463
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐久間 渉 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | セルロースナノファイバー / 多孔体 / エアロゲル / キセロゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
エアロゲルは大比表面積や高空隙率などの優れた構造特性を有する多孔質材料の総称である。セルロースナノファイバー(CNF)を骨格とするエアロゲルは光透過性や超断熱性、高靭性を有し、透明な断熱材としての応用が期待されている。しかしながら製造過程に超臨界乾燥が不可欠であり、大規模な製造は難しく、現状として適用先が限定されている。そこで本研究では、簡便な蒸発乾燥法による多孔体形成に取り組んできた。このような多孔体はキセロゲルと呼ばれる。今年度の研究では、CNFキセロゲルの構造特性・材料物性を調査した。 各種CNFキセロゲルは網目状骨格を有し、比表面積は、湿潤ゲル濃度の上昇とともに、また、乾燥温度の上昇により増大した。この結果は、濃度上昇による湿潤ゲルの弾性率の向上と、温度上昇による溶媒の表面張力の減少によるものと考えられる。比表面積の最大値は470 m2/gであり、これまで報告されているCNFキセロゲルで最高の値を達成した。 一方、空隙率は調製条件にかかわらず、約80%で一定であった。この傾向は、濃度上昇による弾性率の向上の効果が、密度の増加と相殺したことによるものと考えられる。 得られたCNFキセロゲルは15%程度の光透過率を有していた。電子顕微鏡観察により、試料表面に数十マイクロメートルの凹凸が見られ、表面での光の散乱が示唆された。そこで、紙やすりで表面を研磨したところ、光透過率が30%程度まで上昇した。 CNFキセロゲル面外方向の圧縮試験により得られた弾性率はおよそ170 MPaであり、エアロゲルの100倍以上の値であった。50%ひずみまで圧縮した後も、試料には割れや亀裂は見られなかった。CNFキセロゲル面内方向の引張試験の応力ひずみ曲線から算出した弾性率は290 MPaであった。圧縮・引張試験における弾性率の差は、キセロゲル内のCNFが面内に配向している効果だと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に従った進度で研究が進んでおり、論文化に足る精度・量のデータの蓄積を達成しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
現在までのデータを論文に投稿する。その後、ナノファイバー間の化学架橋・表面の疎水化を検討する。
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Research Products
(5 results)