2020 Fiscal Year Annual Research Report
木質バイオマスを由来とする新規多孔体の開発と透明断熱材への応用
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19J22463
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐久間 渉 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | セルロースナノファイバー / 多孔体 / エアロゲル / キセロゲル |
Outline of Annual Research Achievements |
エアロゲルは大比表面積や高空隙率などの優れた構造特性を有する多孔質材料の総称である。セルロースナノファイバー(CNF)を骨格とするエアロゲルは光透過性や超断熱性、高靭性を有し、透明な断熱材としての応用が期待されている。しかしながら製造過程に超臨界乾燥法が不可欠であり、大規模な製造は難しく、現状として適用先が限定されている。そこで本研究では、簡便な蒸発乾燥法による多孔体形成に取り組んできた。このような多孔体はキセロゲルと呼ばれる。今年度の研究では、引き続き、CNFキセロゲルの材料物性を調査した。 工学系研究室の協力のもと、定常法による熱伝導率の測定装置を自作し、測定を行った。測定パラメータの検討において、試料厚み、印加電圧の影響が見られたため、標準試料と比較しながら測定条件を精査し、信頼できる測定系を確立した。測定の結果、CNFキセロゲルの熱伝導率は60-70 mW m-1 K-1と、木材よりも大幅に低く、市販の断熱に迫る値であることが分かった。 また、製紙業界において添加物として用いられる、水酸化アルミニウムの耐燃焼性に着想を得て、CNFキセロゲルの耐火性を評価した。試験片の端に火を点けたところ、キセロゲルと同程度の密度を持つパイン材では、火が燃え広がり、最終的に黒く燃え尽きる様子が見られた。一方で、キセロゲルでは一度点いた火がすぐに消える自己消火性が発現し、燃え留まる様子が観察された。 以上の結果について、進捗状況に応じて学会で発表を行った。発表が評価され、第71回日本木材学会大会において、学生優秀口頭発表賞を受賞した。また、以上の内容を取りまとめ、論文を執筆、投稿した。論文は、当該分野における最高峰の学術誌の一つACS Nano誌に掲載された。同時に、大学のホームページでもプレスリリースを行い、広く研究成果を発信した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画に従った進度で研究が進んでおり、論文投稿を達成しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
CNF多孔体をテンプレートとした樹脂複合体を調製する。また、CNF多孔体骨格の疎水化に取り組む。
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Research Products
(5 results)