2019 Fiscal Year Annual Research Report
不均一系白金族触媒的重水素標識法の開発と連続フロー式重水素標識法への応用
Project/Area Number |
19J22469
|
Research Institution | Gifu Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
朴 貴煥 岐阜薬科大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | 重水素標識 / 不均一系触媒 / 連続フロー合成 |
Outline of Annual Research Achievements |
[1] アリルアルコールの重水素標識反応 : 重水中、白金炭素(Pt/C)存在下、Pt触媒を活性化するための水素源としてトリアルキルアミンに代えてベンジルアミンを添加してアリルアルコールを重水素化するとオレフィン部位の還元を10%以下に抑えつつ高い重水素化率のアリルアルコールが生成した。この反応ではベンジルアミンは、Pt/C触媒的に脱水素されてイミンやベンゾニトリルに変換されることも確認した。申請者の研究室では、アクリル酸ナトリウムなどの水素アクセプターの添加により、同in situで生成する水素をトラップして基質分子内に共存するアルケンの接触水素化を抑制する方法を確立している(Green Chem., 2018, 20, 1213.)。これを利用して、アクリル酸ナトリウムを添加したところ還元体の副生を5%以下まで低減できた。 [2] 連続フロー式重水素標識法の開発 : Pt/カーボンビーズ(CB)を充填した触媒カートリッジに、基質の2-プロパノール(2-PrOH)/重水混合溶液を送液すると、触媒層を通過する僅か60秒程度で芳香環に効率良く重水素が導入されることを見出した。カートリッジ内では、Pt/CB触媒的に2-PrOHから脱水素して発生した水素がPt/CBを活性化し、カートリッジ内で基質が、活性化されたPt/CBと効率良く接触するため、短時間で重水素標識反応が進行する。また、Pt/CBの単独使用では重水素標識が困難な基質も存在した。この場合にはPt/CBとパラジウム(Pd)/CBを混合してカートリッジに封入することで共触媒的相乗効果を発現させることで重水素化効率の向上に成功し、広範な基質一般性を示すことができた。なお、サリチル酸溶液を触媒カートリッジに長時間連続送液した場合にも、少なくとも12時間は触媒の劣化や失活が認められず高い重水素化率を維持できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
[1] アリルアルコールの重水素標識反応 : 触媒金属の活性化剤である水素源にベンジルアミンを使用し、アルケン部位の還元を抑制する水素アクセプターとしてアクリル酸ナトリウムを添加する条件を見出し、重水素標識反応条件の最適化を達成したため、研究計画を上回るペースで遂行することができた。 [2] 連続フロー式重水素標識法の開発 : 芳香族化合物の連続フロー式重水素標識法の確立は、当初の計画では2020年度の予定であったが、前倒しして進めることができた。すでに、反応条件検討、基質一般性検討、長時間連続運転検討を終了しているため、計画以上に進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
[1] アリルアルコールの重水素標識反応 : 最適化した重水素標識反応を用いて基質一般性を検討する。第三級アリルアルコールをモデル基質としていたが、第一級および第二級アリルアルコールの重水素化も検討し、必要があれば反応条件を再検討する。また、ビタミンAやビタミンEの合成中間体であるリナロールなどの生物活性物質やその中間体の直接的な重水素標識にも挑戦し、アリルアルコールの重水素標識法として一般性を確立する。 [2] 連続フロー式重水素標識法の開発 : 低極性化合物を2-PrOH/重水の混合溶媒に完全に溶解するためには2-PrOHを増量する必要があるが、2-PrOHの酸性プロトンにより重水純度が低下するため、重水素化率の低下が懸念される。そこで、低極性化合物の2-PrOH溶液と重水をそれぞれ別のポンプで送液して、ミキサーを介してスラグ流を形成しながら触媒カートリッジに送液したところ、中程度で重水素標識されることが判った。2020年度は、重水素化率の向上を目指し、H-D交換反応の影響を受けにくいアルカンを共溶媒として追加し、2-PrOH/アルカンの混合溶媒に低極性化合物を溶解させて、連続フロー式反応に適用する。基質一般性を充実するとともに、2019年度に確立した方法論と合わせて芳香族化合物の連続フロー式重水素標識法として一般性を確立する。 また、低極性化合物の連続フロー式反応の検討結果に基づいて、重水の再利用法の検討にも着手する。重水に混和しない有機溶媒に基質を溶解して、その溶解液と重水をそれぞれ別のポンプから同時に送液する。触媒の活性化剤として少量の水素ガスも同時に触媒カートリッジに移送する。カートリッジ出口に液-液セパレータを設置して、有機層と重水層を分離・回収し、重水を再循環する方法論として確立する
|