2019 Fiscal Year Annual Research Report
過度な森林資源の収奪による山地流域の不可逆的環境変化のモデル化:ハゲ山を捉え直す
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19J22493
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太田 凌嘉 京都大学, 理学研究科地球惑星科学専攻, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 宇宙線生成核種 / 加速器質量分析 / 地理情報システム / ハゲ山 / 土層 / 樹木根系 / 削剥速度 / モデリング |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はまず,森林の消失に伴い流域斜面の土層の存続性がどのように変化するのかを検討するため,人為的な影響を受けて裸地化した流域(若女裸地流域)と森林に覆われ土層が発達する流域(不動寺流域)をモデル流域に設定し,現地調査および地理情報システム上での解析を実施した.現地調査,土質試験そして宇宙線生成核種分析により得られたパラメータをもとに,デジタル地形モデル上での数値計算を行い,流域における土層の空間分布を再現することができた.さらにそれを場の条件として,モデル化した樹木根系の土層補強効果を導入して土層の安定性を評価すると,樹木根系の消失とともに,土層の存続性が低減する様子が再現された. また,流域がハゲ山の状態へと遷移する過程で,どのくらいの厚みの土砂が斜面から削剥されたのかを定量的に推定するため,土層および植生の状態が異なる流域を対象に,渓流堆砂中の宇宙線生成核種分析を行った.ハゲ山化した流域では人為的な影響を受けていない流域に比べて渓流堆砂中の10Be濃度が1/3-1/4 倍小さいことがわかり,削剥された土砂の厚みをその差分から計算する方法を確立した. このほか,流域斜面がいつから,どのようにして裸地の状態になったのかを検討するため,山麓低地の天井川堆積物の掘削調査・分析を新たに開始した.コア試料は,2020年2月に簡易パーカッションボーリングマシンにより採取した.現在,堆積物中の10Be濃度分析と埋没有機物の放射性炭素年代測定を行っている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
計画通り調査・分析が進捗しているため.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,基礎となるデータの取得をすすめ,より精緻にモデリングするための工夫を重ねてゆく方針である.得られた成果は,学会発表や論文出版により順次公表する.
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