2020 Fiscal Year Annual Research Report
過度な森林資源の収奪による山地流域の不可逆的環境変化のモデル化:ハゲ山を捉え直す
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19J22493
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太田 凌嘉 京都大学, 京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 宇宙線生成核種 / 放射性炭素年代測定 / 加速器質量分析 / 地形学 / 地理情報システム / 人為影響 / クリティカルゾーン / 田上山地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,2020年2月に簡易パーカッションボーリングマシンにより山麓低地で採取したボーリングコアを対象に堆積物中の10Be濃度分析および埋没有機物の14C年代測定を実施し,流域出口近傍の堆積場での土砂供給履歴の復元を試みた.掘削したボーリングコアの堆積物中の10Be濃度を深度方向に分析した結果,コア基底で森林流域の渓流堆砂に相当する濃度(5.8×104 atoms g-1)であり,それより上位になると荒廃裸地流域の渓流堆砂に相当する濃度(2.6×104 atoms g-1)へと低減することがわかった.また,堆積物の10Be濃度の低減過程には,濃度が大きくなる方向に戻るような層準を繰り返し挟んでいることがわかった.これらの成果から,ひとたび裸地斜面があらわれるようになると,冬期の凍結破砕によってサプロライト上面から生産された土砂が降雨のたびに表面流出によって侵食されて堆積物中の10Be濃度は小さくなるが,流域内に残存していた土層が豪雨時の侵食よって流出すれば,堆積物中の10Be濃度が一時的に大きくなることが考えられる.堆積物から見出された埋没有機物の年代測定も進んでおり,土砂流出履歴を復元するために不可欠な情報源を得ることができた. これらの分析結果から,植生回復が追いつかなくなるほど過度に森林資源を収奪し続けて山地斜面の樹冠や被覆層が消失すると,元の状態へと戻ることができなくなるような転換点が存在することが示された.現在分析中の14C年代測定の結果が出揃い次第,より精緻に土砂流出履歴を復元できると期待される. 新型コロナウイルスの感染拡大に伴う活動制限を受けて,調査や実験が思うように進まなかった時期もあったが,成果を論文としてまとめるうえで貴重なデータを得ることができた.本年度の成果は,日本地球惑星科学連合などにおいて学会発表し,参加者との意見・情報交換を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う活動制限を受けて,調査や実験が思うように進められなかった時期があり,成果の公表が予定よりも遅くなったため.
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Strategy for Future Research Activity |
必要なフィールドデータは,ほぼ出揃いつつある.今年度は,前年度までに得られたデータをもとにモデルの開発を進めてゆく.引き続き,得られた成果は学会発表および論文出版により順次公表してゆく予定である.
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