2021 Fiscal Year Annual Research Report
過度な森林資源の収奪による山地流域の不可逆的環境変化のモデル化:ハゲ山を捉え直す
Project/Area Number |
19J22493
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
太田 凌嘉 京都大学, 京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | 人新世 / 環境変化 / ハゲ山 / 侵食加速 / 削剥 / 宇宙線生成核種 / 放射性炭素年代測定 / 自然地理学 |
Outline of Annual Research Achievements |
前年度までの現地調査や試料分析で得られたデータをとりまとめて論文を執筆し,国際学術誌(Geomorphology)に投稿した.この成果は2022年3月11日に受理された.宇宙線生成核種10Beを使って人為的侵食加速過程を評価する新しい方法論を開発し,その適用可能性を滋賀県・田上山地で検証した.宇宙線生成核種の分析から,厚みに換算して0.3-1.8 mの土砂が流域環境の遷移過程に削剥され,過去300年間に斜面を覆う土層の流亡が加速して無機質な地形材料が流域に広く露出するようになったことが明らかになった.本研究の新たなアプローチにより復元された流域の環境変遷は,歴史記録に基づいて検討されてきた従来の認識と一致する.このことは,森林資源を共生的に利用している限り土層と植生は回復可能で,土層が完全に喪失して無機質な地形材料が斜面表層に露出するようになるまでの間には数百年ほどのタイムラグが存在したことが明確にした.つまり,流域環境のもつ許容力を上回る強制力(この場合,人為影響)が加わる前に手を打つことで,不可逆的な環境破壊を未然に防げるという重要な示唆を得た.人為影響のような外部強制力に対する流域の許容力についての評価は今後の課題として残されており,斜面構成物質の諸物性や森林生態系による侵食防護効果を加味したモデリングを通じてそのような流域システムの振る舞いを検討することができると考えている.新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミックに伴い,研究の進捗に実質的な影響が出たものの,当初の研究目的はなんとか達成された.
|
Research Progress Status |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
|