2019 Fiscal Year Annual Research Report
ニワトリfoxl3遺伝子の解析から探る, 鳥類特有の性分化機構
Project/Area Number |
19J22544
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
市川 健之助 広島大学, 統合生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 性分化 / ニワトリ / 始原生殖細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では鳥類特有の性分化機構を明らかにすることを目的とし, ニワトリfoxl3-like geneが生殖細胞の雌性分化機構に及ぼす影響を解析している. 令和元年度は, foxl3-like protein発現細胞の同定を目的として, 免疫蛍光組織染色を行った. その結果, メス胚の卵原細胞の核特異的にFOXL3-like proteinが発現していることが明らかになった. 本結果から, ニワトリFOXL3-like proteinは, 雌雄の性的に未分化な生殖細胞で発現するメダカFOXL3と異なる特徴をもつことが示唆された. また, 雌雄の始原生殖細胞の発生過程における遺伝子発現変化を明らかにするために, RNA-seqを用いたトランスクリプトーム解析を行った. 本解析では, はじめに, 孵卵18時間目胚の全胚, 孵卵2.5日目胚の全血, 孵卵4.5日目胚の生殖腺を回収した. 続いて, 生殖細胞マーカーであるstage-specific embryonic antigen-1 (SSEA-1)に対する抗体を用いたフローサイトメトリーにより, 始原生殖細胞を単離した. 得られた始原生殖細胞は, 生殖細胞マーカーであるchicken vasa homologue (CVH)抗体を用いた免疫蛍光染色に供試し, 純度を評価した. その結果, 雌雄共に解析した全ての発生ステージにおいて, 97%以上の純度で始原生殖細胞を単離できていたことが明らかになった. その後, 雌雄それぞれの各発生ステージから得られた始原生殖細胞, および孵卵 4.5 日目胚の生殖腺 を RNA-seq に供試し, トランスクリプトーム解析を行った. 本解析で得られた結果は, 孵卵 2.5 日から 4.5 日目にかけて, 始原生殖細胞の性決定が生じている可能性を強く示唆していた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
令和元年度は, (1)FOXL3-like protein発現細胞の同定, (2)foxl3-like geneの転写制御機構の解析, (3)foxl3-like geneの機能解析を当初の計画としていた. (1)では, 免疫蛍光組織染色により, FOXL3-like proteinがニワトリ卵原細胞に特異的に発現することが明らかになった. 加えて, メダカーニワトリ間でfoxl3の発現ステージが異なることから, 魚類―鳥類間でfoxl3を介した生殖細胞の性決定機構が保存されていないこと, ニワトリfoxl3-like geneは生殖細胞の雌性分化機構において特有の機能を有していることが示唆された. 当初計画では(2)および(3)を行う予定であった. しかし, 当初計画よりさらに未分化な発生ステージにおける性決定因子を同定し, 本因子がfoxl3-like gene発現および卵原細胞形成に及ぼす影響を評価することで, よりハイインパクトな成果が得られると判断したため, 初期胚の始原生殖細胞における遺伝子発現変化に着目した実験計画を再構築した. 本解析では, FACSを用いて初期胚から始原生殖細胞を高純度で単離したのち, トランスクリプトーム解析を行った. その結果, 孵卵2.5日目から4.5日目にかけて始原生殖細胞の性決定が生じている可能性が示唆された. 本解析によって得られた性決定因子候補の機能およびfoxl3-like発現への関与を評価することで, 鳥類特有の雌性分化機構を当初研究より広い発生ステージで解析することが可能となる. 以上より, 当初計画で予定していたFOXL3-like protein発現細胞の同定に加え, 鳥類生殖細胞の性決定ステージの同定が期待される知見を得たため, 令和元年度は当初の計画以上に研究が進展していると判断した.
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Strategy for Future Research Activity |
令和2年度では, 前年度に行った初期胚始原生殖細胞のRNA-seq解析結果を元に, 鳥類の性決定機構に関与する特有の因子を明らかにする. はじめに, RNA-seq解析によって得られた発現変動遺伝子をターゲットとしたrealtime-PCRを行う. 本解析により, RNA-seq解析の結果と同様の発現パターンが確認される因子を明らかにする. 続いて, 得られた性決定関連因子の機能を明らかにする. 本解析では, 候補因子をノックダウンした初期胚, またはゲノム編集技術を用いて候補因子をKOした始原生殖細胞を移植した生殖系列キメラ胚を作出する. 続いて, 作出した胚の生殖細胞形成における表現型を評価する. 野生型のニワトリ胚では, メス胚始原生殖細胞は生殖腺の皮質に, オス胚始原生殖細胞は髄質にそれぞれ局在する. そこで, 本解析では生殖細胞の局在の変化を, 抗CVH抗体を用いた免疫組織染色により評価する. 加えて, メス胚生殖細胞の減数分裂期に特異的に発現するStimulated by retinoic acid 8 (STRA8)等の性分化関連因子の発現量をrealtime-PCRにより解析する. さらに, foxl3-like geneの発現解析を同様に行い, 各候補因子の性分化機構への関与を明らかにする. foxl3-like geneの発現変動が見られた胚では, 発生後における配偶子形成における表現型を評価し, 鳥類特有の性分化機構を体系的に評価する.
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Research Products
(1 results)