2020 Fiscal Year Annual Research Report
アナログフィルタの機能を有する織物電極によるウェアラブル心電測定
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19J22555
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
寺田 貴雅 山梨大学, 医工農学総合教育部, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 導電性織物 / 心電図 / ウェアラブル機器 / IoT / 深層学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
ウェアラブル型の心電図測定装置に用いられる布のような乾燥電極は,ジェルを使用する電極よりもノイズの影響を受けやすいことが知られている.従来の心電図測定システムではノイズの影響を軽減させるために,電極や電子回路・ノイズ除去アルゴリズムなどの様々な観点から改善が行われてきたが,中でも布の電極は肌表面の電位を受信する役割しかなかった.本研究ではノイズの影響を受けやすい環境においても正常に心電図が測定できることを目指し,ノイズを軽減する織物電極及びノイズ除去アルゴリズムの改善に取り組んできた.中でも採用2年目では,ノイズ除去アルゴリズムの改善に取り組んだ.
近年,様々なノイズを同時に除去するための手法として,深層学習を用いる手法が注目されている.しかし,ウェアラブルデバイスのようにノイズの影響を大きく受けた心電図の場合には,ノイズ除去の精度が下がるという問題が存在した.そこで本研究では,この問題を既存のモデルが心電図の特性だけに注目して深層学習のモデルを設計していたことが原因だと仮定し,より大きなノイズが混入した場合でもノイズ除去性能を向上させることができるような深層学習のモデルを提案した.評価では,ノイズの影響が大きくなった場合でも従来の深層学習のモデルよりも精度の高い結果が得られた.
今後,深層学習のモデルと導電性織物を組み合わせて一つのウェアラブル心電図測定システムとすることで,システム全体でノイズの除去性能を評価する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
採用2年目までにノイズを軽減する導電性織物と,よりノイズに頑健なノイズ除去アルゴリズムを検討した.これによりハードウェア・ソフトウェアの両方の観点から,ノイズに頑強なウェアラブル心電図測定装置の実現に向けた知見を得たことで,おおむね順調に進展したと考えられる. 特に2年目のノイズ除去アルゴリズムについては,公開されている心電図のデータベースを用いて深層学習モデルの検証を進めてきた.新しい深層学習のモデルとしては,心電図と心電図に含まれるノイズの両方を同時に学習できる仕組みを新たに導入した.実験では,-15dBから15dBの異なる大きさのノイズを加えて実験したところ,より大きなノイズが混入した場合でも従来の深層学習の手法よりも高い精度が得られていた.なおウェアラブル装置で測定した心電図に対しての検証は引き続き調査を行う予定である.
なお,精度の向上のために深層学習のパラメータの調整や新しいモデルの検証に時間を要したため,これまでの成果は採用3年目に英文論文誌に採択されることを目指す.
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに得られた新たな乾燥電極に関する知見と,2年目のノイズ除去アルゴリズムの知見を組み合わせることで,ハードウェアとソフトウェア両方の観点からウェアラブル心電図測定システムの改良を目指す. システムの改良に向けて,まずは新たな電極と深層学習を用いて心電図を測定可能にするシステムを構築する.その後,シグナルジェネレータを使い,実際の心電図測定環境を想定した環境を構築する.そして,既存の心電図を処理するための電子回路と,既存のノイズ除去用のアルゴリズムを用意し,提案するシステムとの比較を行うことで提案するシステムの優位性を明らかにする. また評価の段階では,電子回路の部分に既存の電子回路を使うことを想定している.しかし,これまでに取り組んだ電極のノイズ軽減と深層学習によるノイズ除去によって,消費電力の少ない回路や小さい面積への実装を可能にする余地が残されている.そのため,ただ従来手法と比較をするだけでなく,システムに最適な電子回路についても検討することで,より実用に耐えられるようなシステムの提案を目指す予定である. 本年中に得られた成果は英文論文誌への投稿を目指し,現時点までに投稿中の成果とあわせて採択されることを目指す.
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