2019 Fiscal Year Annual Research Report
腸内常在性乳酸菌の生体外機能強化系の確立と宿主への還元性評価
Project/Area Number |
19J22578
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
生井 楓 信州大学, 総合医理工学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | 乳酸菌 / リボソーム工学 / 腸管常在性乳酸菌 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では個人の腸内環境に適合した機能性乳酸菌の創出を目指し、リボソーム工学を用いた腸管常在性乳酸菌の生体外強化系の確立を目的とする。近年、数多くの機能性乳酸菌が提案されているが、これらの機能性は摂取する宿主の腸内環境によってその効果に偏りが出ることが知られている。そこで、もともと腸管に存在する乳酸菌を強化することができれば、テーラーメイドな機能性乳酸菌を提案できるのではないかと考えた。乳酸菌の強化法としてはリボソーム工学に着目した。リボソーム工学とはリボソーム攻撃性の抗生物質で微生物を刺激することにより突然変異を誘発し、その潜在能力を引き出す手法である。これまでに腸管常在性乳酸菌の取得として、C57BL/6マウスの糞便より主に2種類のLactobacillus属の乳酸菌に高い相同性を示す菌株の単離に成功している。さらに、第1優先菌種であったLactobacillus属乳酸菌に対してはリボソーム攻撃性の抗生物質を用いて薬剤耐性変異の導入を行った。具体的には抗生物質を最小発育阻止濃度(MIC)で含むMRS寒天培地に1×108 CFUとなるように単離したLactobacillus属乳酸菌を塗布し、37 ℃で3日間培養した。得られたシングルコロニーからコロニーダイレクトPCRにて目的遺伝子を増幅し、シークエンス解析に供することで変異箇所の同定を行った。結果として、現在までに5タイプの変異株の取得に成功している。先行研究から乳酸菌に対する薬剤耐性変異の導入により、分泌タンパク質の変化や乳酸菌表面構造の変化が引き起こされることが知られている。そのため、これまでに取得したLactobacillus属乳酸菌の変異株でも同様の変化が期待される。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成31年度はC57BL/6マウスの糞便より乳酸菌の単離を行うとともに、第1優先菌種であったLactobacillus属乳酸菌に対してリボソーム攻撃性の抗生物質を用いたリボソーム工学を適用した。また、5タイプの薬剤耐性変異株の取得に成功しており、これまでに報告のない新規の変異タイプの取得にも成功している。得られた変異株の機能性解析のためのin vitro試験に向けた予備検討も進行しているため、おおむね順調に進行していると判断した。
|
Strategy for Future Research Activity |
令和2年度は第1優先菌種のLactobacillus属乳酸菌に引き続き、第2優先菌種であったLactobacillus属乳酸菌に薬剤耐性変異を導入し、変異株を取得するとともに、培養細胞系を用いたin vitroにおける機能性解析の検証を行い、強化乳酸菌の選抜を行う。具体的にはマウスマクロファージ細胞株であるRaw264.7細胞に対し、第1優先菌種のLactobacillus属乳酸菌もしくはその変異株を添加し、その後リポポリサッカライド(LPS)を用いて炎症状態を誘導する。それぞれの抗炎症効果は腫瘍壊死因子(TNF-α)のmRNA発現量をRT-qPCR法を用いて測定することで、検証する。
|
Research Products
(2 results)