2020 Fiscal Year Annual Research Report
Structural analysis of biased agonism in GPCR and drug discovery
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19J22636
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
前田 信太郎 京都大学, 医学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | GPCR / バイアスド・アゴニスト / シグナル伝達 / S1P / 構造解析 / 活性化機構 |
Outline of Annual Research Achievements |
Gタンパク質共役受容体(GPCR)は細胞外からの刺激に応じてその構造を変化させ、3量体Gタンパク質やアレスチンなどの細胞内の情報伝達を担う分子を活性化する。これまでに数多くのGPCR作動薬 (アゴニスト)が開発されたことにより、アゴニストの中には内在性基質とは異なるシグナル・プロファイルを示すもの(バイアスド・アゴニスト)があることが報告されてきた。しかしながら、これらのバイアスド・アゴニストが同一のGPCRに対してどのような構造変化を引き起こすのかは未だに解明されていない。本研究ではスフィンゴシン1-1リン酸 (S1P)を受容するS1PR3と様々なリガンドの複合体の構造を解析することで、バイアスド・アゴニストがどのように細胞内のシグナル伝達にバイアスを掛けているのか明らかにするとともに、目的のシグナルのみを伝えるバイアスド・アゴニストをデザインできるようにすることを目的としている。本年度は、前年度に構造決定した内因性基質であるS1Pの結合したS1PR3の構造とバイアスド・アゴニストに関して論文にまとめた。今回の構造からS1Pは受容体の斜めに真っ直ぐ突き刺さることで受容体を活性化させる (三量体Gタンパク質と共役できるようになる)というユニークな活性化機構が明らかとなった。また、S1Pの類縁体のシグナル解析の結果から、短い脂質鎖を持つS1Pの類縁体はバイアスド・アゴニストとなることも同定した。これらの結果はS1P受容体に対するバイアスド・アゴニストをデザインするための手助けとなり、S1P受容体を標的とした創薬が加速することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度はシグナルアッセイの実験を迅速に終わらせることができ、S1P受容体の構造解析に関して論文にまとめることができたため。現在はバイアスド・アゴニズム機構に関して、重要なアミノ酸残基まで同定することができている。残りの期間でそのアミノ酸残基がどのような構造変化を介してシグナル伝達を制御しているのか詳細に検証していく必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
バイアスド・アゴニストとの複合体に関しては難易度が高いため、現在は超低温電子顕微鏡を用いた単粒子解析により、バイアスド・アゴニストを含む様々なアゴニストと複数のGタンパク質との複合体での構造解析を試みる予定である。
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