2019 Fiscal Year Annual Research Report
モバイルエージェントシステムにおけるメモリ領域の導入
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19J22696
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
北村 直暉 名古屋工業大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | モバイルエージェント / 分散アルゴリズム / ランデブー問題 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は分散アルゴリズムに関する幅広い問題に関して研究を行った.モバイルエージェントに関する研究ではランデブー問題を取り扱った.ランデブー問題とはグラフ上に配置された2体のエージェントを単一の頂点に集合させる問題である.ランデブー問題に関する研究では大きく分けて2つの設定で成果を出すことができた.1つ目の設定では(1)2体のエージェントが隣り合う頂点に配置され,(2)各頂点にはIDが割り当てられており,(3)各エージェントは自身が訪れた頂点とその頂点の隣接頂点のIDを知ることができるという仮定を置いたモデルである.本研究では特にエージェントが隣接している場合に関して研究を行った.本研究の成果は各頂点に情報を自由に書ける白板がある場合とそうでない場合の2つのパターンでランデブーアルゴリズムを考案した.さらにいくつかの制約の元で成り立つランデブー問題の実行時間に関する下界について証明した.この結果はICDCS2020に採択が決定している.2つめの設定では(1)エージェントはグラフのトポロジーに関して既知であり(2)各頂点にはIDが割り当てられており,(3)2エージェントの距離がd離れているモデルについて研究を行った.特に縮退度が制限され,辺縮約の操作に関して閉じているグラフクラスについて研究を行った.この結果は第175回アルゴリズム研究会で発表を行っている.一般の分散グラフアルゴリズムに関する研究では低競合ショートカットという枠組みに関して研究を行った.低競合ショートカットは分散アルゴリズム上で最小全域木や最小カットの導出などの構成に用いられる極めて重要な問題である.本研究では直径が3,4のグラフ,k-コーダルグラフ,クリーク幅が制限されたクラスの3つについて研究を行った.これらの結果はLA Smposium2019およびDISC2019によって発表されている.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在までの研究ではモバイルエージェント群に関する基礎問題の1つであるランデブー問題について成果を上げることができた.当初の目的の1つである各ノードがデータを保存する領域(白板領域)の有無やデータが消失するグラフに関しては,エージェントに強い能力を仮定したモデルで白板の有無と実行時間に関してトレードオフを持つアルゴリズムを考案した.この結果はトップカンファレンスの1つであるICDCS2020(採択率18%)に採録が決定しており,該当分野からの高い評価が得られている.また,k-縮退グラフで辺縮約の操作に関して閉じているグラフではエージェントがグラフのトポロジーが既知であるという仮定のもとでノードの数に依存しないアルゴリズムを考案した.この結果は本研究の目的である大規模ネットワーク上のモバイルエージェントアルゴリズムとして極めて有用であると考えられる.また,一般の分散グラフアルゴリズムに関しても15年間未解決であった分散システム上での最小全域木の構築を肯定的に解決しており,トップカンファレンスの1つであるDISC(採択率24%)で発表をしている.一方,研究の目的の1つである動的なネットワークに関する研究では成果をあげておらず,来年度の課題である.
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Strategy for Future Research Activity |
次年度の目標はモバイルエージェントに関して,引き続き白板領域の有無やエージェントの記憶領域と実行時間の関係について研究を行っていく.また動的ネットワークに関する研究では,Casteights等が提案した動的ネットワークのクラス階層に関して,どのような性質を持つグラフでランデブー問題やグラフ探索問題が可解であるかや,エージェントの能力と実行時間のトレードオフに関して研究を行っていく.
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