2019 Fiscal Year Annual Research Report
生体内のHIV-1複製を制御するエピジェネティックネットワークの解明
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19J22802
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
長岡 峻平 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | HIV-1 / トランスクリプトーム / オミクス / AIDS / プロウイルス / エピゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、GFP遺伝子を組み込んだHIV1-GFPをヒト化マウスに感染させることで、GFP陽性のCD4T細胞(ウイルス産生細胞)とGFP陰性のCD4T細胞(非感染細胞と潜伏感染細胞)をそれぞれ分取した。さらに、潜伏感染したHIV-1の再活性化に用いられるPMA/Ionomycin刺激により、GFP陰性CD4T細胞をさらにGFP陽性細胞(P/I)とGFP陰性細胞(P/I)を分画・分取した。これら4つの細胞集団からDNAを抽出し、digital droplet PCR (ddPCR)法によって、それぞれの集団内におけるウイルスDNA量を定量した。また、linker-mediated PCR (LM-PCR)法によって、ヒトゲノム中に組み込まれたプロウイルスの位置情報を網羅的に解析した。以上の解析により、以下に示すことが明らかになった。 1.GFP陰性細胞(刺激前)においてウイルスゲノムが検出され、潜伏感染細胞の存在が示唆された。 2.PMA/Ionomycin刺激後のGFP陰性細胞にもウイルスゲノムが検出されることから、欠損あるいは不活化したウイルスゲノムの存在が示唆された。 3.GFP陽性細胞(刺激前)では、GFP陰性細胞(刺激前)に比べて、H3K27acやH3K4me3といった転写活性化ヒストンの修飾を受けるゲノム領域にウイルスゲノムが有意に多く存在し、 H3K27me3という転写抑制化ヒストンの修飾を受けた領域には少ないことが明らかになった。(しかし、劇的な差異はなく、ウイルスの転写への寄与は部分的である可能性がある。) 以上の結果は、生体内におけるHIV-1感染細胞の性状、特にヒトゲノムに組み込まれたHIV-1ゲノムの特徴の一端を明らかにしたものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度においては、生体内におけるHIV-1ゲノムの性状についての解析を終えることができており、順調に進展していると考えられる。さらに、次年度の研究に必要な道具や環境の整備にもすでに着手しており、研究課題を円滑に継続できると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究ではこれまでに、digital RNA-sequencing analysisを用いてGFP陽性細胞とGFP陰性細胞のトランスクリプトームを解析している。さらに、トランスクリプトームのデータから、GFP陽性細胞において何らかの役割を持つ可能性がある転写因子・DNA結合タンパク質を推定している。そ の結果、GFP陽性細胞ではKMT2Aと呼ばれるヒストンH3K4me3修飾酵素の活性が高いことが分かっいる。現在、T細胞の細胞株においてCRISPR/Cas9により本遺伝子をノックアウトし、ウイルス複製への影響を解析中であり、次年度も引き続き解析を行う。 転写因子・DNA結合タンパク質の推定には、遺伝子の発現量そのものを解析しているではなく、下流遺伝子の発現量等の情報に基づいて活性レベルを計算している。1つの下流遺伝子に作用する転写因子・DNA結合タンパク質は多種多様であるため、遺伝子間ネットワークは非常に複雑であり、必ずしも下流遺伝子の情報から上流遺伝子の活性を正確に推定できるわけではない。推定された候補遺伝子をCRISPR/Cas9によりノックアウトしても、HIV-1感染に影響を与えない可能性がある。その可能性を考慮して、トランスクリプトーム解析によりGFP陽性細胞において発現が有意に増加しているCXCL13と呼ばれるケモカインについても同時に解析を進めていく。CXCL13にはCXCR5と呼ばれる受容体が存在しており、この受容体を発現したT細胞株を作製し、CXCL13が与えるウイルス感染への影響について解析する。
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Research Products
(2 results)