2019 Fiscal Year Annual Research Report
リンパ管新生に着目した犬の腸リンパ管拡張症の病態解析
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19J22813
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永原 拓朗 東京大学, 農学生命科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 犬 / 腸リンパ管拡張症 / リンパ管新生 / リンパ管イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
犬の腸リンパ管拡張症は腸絨毛のリンパ管が拡張、破綻しリンパ液が腸管内腔へと漏出する疾患である。本研究では腸リンパ管の可視化、腸リンパ管拡張症の病態に関与する分子の同定、リンパ管内皮細胞を用いた本疾患の原因の解明という観点から犬の腸リンパ管拡張症の病態を解明する。 腸リンパ管拡張症の症例では何らかの原因でリンパ循環の異常を生じていることが予想される。まず生体内での MRI を用いたリンパ管イメージング法について検討を行った。同一の犬で CT リンパ管造影と MRI を用いたリンパ管の描出を行い、画像を重ね合わせることで MRI により胸腹部のリンパ管 (腰リンパ本幹、乳び槽、胸管) の描出、形態学的な評価が可能なことを確認した。 リンパ管新生はリンパ管内皮細胞が遊走、増殖し新しいリンパ管を形成する一連の過程であり、リンパ循環の恒常性維持に重要な役割をもつ。病理組織学的にリンパ管拡張を伴う慢性腸炎と診断された犬の内視鏡生検サンプルを用いて、リンパ管新生に関連する遺伝子であるProx1, VEGF-C, VEGF-D, VEGF-3R (Prox1: prospero related homeobox 1, VEGF: vascular endothelial growth factor)の発現量をReal-time PCR により定量した。結果としてはいずれの遺伝子においても健常犬と比較して発現量に有意な差は認められなかった。 腸リンパ管拡張症の犬ではリンパ管内皮細胞に異常を生じている可能性が考えられる。まず今年度はラット胸管にカニュレーションを行うことでリンパ管内皮細胞を分離、培養する手法を習得した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度はMRIにより、犬の生体内で胸腹部のリンパ管 (腰リンパ本幹、乳び槽、胸管) の描出および形態学的な評価を行う手法を確立することができた。 小腸組織におけるリンパ管新生関連遺伝子の発現量解析では研究計画時に期待していた結果は得られなかったが、これは腸組織におけるリンパ管の割合はごくわずかであり、粘膜上皮や炎症細胞などが多数含まれているため差を検出することが困難だったと考えられる。次年度は免疫組織化学を用いて病理組織学的な観点からリンパ管新生の評価を行う。 また、リンパ管内皮細胞を用いた実験についてはラットの胸管を用いてリンパ管へのカニュレーションおよびリンパ管内皮細胞の分離、培養の技術を取得した。次年度はラットで培った技術をもとに、犬のリンパ管内皮細胞の分離、培養を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に確立した MRI によるリンパ管の描出方法を用いて、リンパ管拡張症の犬における胸腹部のリンパ管構造の評価を行う。さらに、MRIを用いたリンパ流速の評価方法の確立を試みる。 免疫組織化学を用いて小腸組織におけるリンパ管構造の評価を行う。さらにリンパ管マーカーに加えて、増殖細胞のマーカーであるKi-67 を併用することで病理組織学的な観点からリンパ管新生の評価を行う。 腸リンパ管拡張症の犬ではリンパ管内皮細胞に異常を生じている可能性が考えられる。腸間膜のリンパ液は他の部位より脂肪酸濃度が高いことが知られていることから、脂肪酸により小腸組織のリンパ管内皮細胞に異常を生じていると仮説を立てた。犬からリンパ管内皮細胞の分離/培養を行う手法を確立し、脂肪酸の添加がリンパ管内皮細胞に与える影響を明らかにする。
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