2020 Fiscal Year Annual Research Report
イヌiPS細胞を用いたin vitro炎症性腸疾患モデルの病態解明・創薬への応用
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19J22851
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
塚本 雅也 大阪府立大学, 生命環境科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | イヌiPS細胞 / 炎症性腸疾患 / 腸オルガノイド / 胚体内胚葉 / 尿由来細胞 / センダイウイルスベクター |
Outline of Annual Research Achievements |
自己複製能と多能性を有する人工多能性幹細胞(iPS細胞)は、遺伝性疾患の患者から作製できるため、病態解明や創薬への応用が可能である。本研究では、炎症性腸疾患を罹患したイヌからiPS細胞を作製し、そこから誘導した腸オルガノイドを用いることで、イヌ炎症性腸疾患の病態解明を行うことを目的としている。本年度では、以下の成果が得られている。 1. 非侵襲的、かつ容易に採取可能な体細胞からのイヌiPS細胞の作製 本研究の遂行には、炎症性腸疾患に罹患しているイヌからiPS細胞を作製する必要がある。すなわち、本研究の遂行には、侵襲性の低い手技により容易に採取が可能な体細胞からイヌiPS細胞を効率よく作製することが必要不可欠であった。そのような細胞源として、採血により採取可能な末梢血単核球に着目し、成犬から得られた末梢血単核球に、センダイウイルスベクターを用いて多能性関連遺伝子を導入することで、イヌiPS細胞を得ることに成功した。さらに、成犬から採取したイヌ尿由来細胞へ、センダイウイルスを用いて多能性関連遺伝子を導入することで、非常に効率よくイヌiPS細胞を得ることに成功した。 2. イヌiPS細胞からの腸オルガノイドの誘導 ヒト多能性幹細胞から腸オルガノイドを誘導する際、胚体内胚葉を経て分化誘導を行う。この際、ヒト多能性幹細胞から80%程度の効率で胚体内胚葉を誘導する必要がある。そこで、イヌiPS細胞から腸オルガノイドを誘導する第一段階として、効率的な胚体内胚葉への誘導法を検討した。その結果、高濃度のActivin Aを添加して3日間培養することで、50%程度の割合で胚体内胚葉へ誘導することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
末梢血単核球および尿由来細胞の二種類の体細胞から、効率よくイヌiPS細胞を作製することに成功した。これにより、研究開始時の第一の関門であった、侵襲性の低い手技により、容易に採取が可能な成犬由来細胞からのイヌiPS細胞の作製が可能になった。すなわち、炎症性腸疾患罹患犬から疾患特異的イヌiPS細胞を作製する方法を確立した。 また、イヌiPS細胞から腸オルガノイドへの誘導の第一段階として、イヌiPS細胞を50%程度の効率で胚体内胚葉へ誘導することにも成功している。さらに、イヌiPS細胞から胚体内胚葉の誘導効率を向上させるための予備実験として、Activin A以外の因子を添加することにより、胚体内胚葉誘導効率を70%程度にまで向上させることができており、腸オルガノイドの誘導のための条件検討を行っている。 これらのことから、おおむね順調に研究が進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で得られたイヌiPS細胞株を用いて、効率的な胚体内胚葉への誘導法を検討する。ヒト多能性幹細胞から胚体内胚葉を誘導する際に、WNT3Aなど様々な添加因子がその誘導効率を向上させることが報告されている。そこで、イヌiPS細胞から胚体内胚葉への誘導の際にも、それらの因子を添加することで胚体内胚葉誘導効率の改善を試みる。その際、複数のイヌiPS細胞株を用いて実験を行うことで、確立した胚体内胚葉誘導法の汎用性を検証する。 続いて、得られた胚体内胚葉にFGF4とWNT3Aを添加して培養することで、中腸後腸スフェロイドを誘導する。スフェロイドについて、中腸後腸マーカーであるCDX2の発現を確認する。さらに得られた中腸後腸スフェロイドをマトリゲルに包埋して培養することで、腸オルガノイドの誘導を試みる。 また、炎症性腸疾患罹患犬の末梢血単核球あるいは尿由来細胞を採取し、センダイウイルスを用いて多能性関連遺伝子をそれらの細胞に導入することで、疾患特異的iPS細胞を作製する。作製した疾患特異的イヌiSP細胞からも胚体内胚葉を経て、腸オルガノイドを誘導する。
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Remarks |
Laboratory of cell pathology http://www.vet.osakafu-u.ac.jp/cell/
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Research Products
(8 results)