2020 Fiscal Year Annual Research Report
液相での単一分子反応制御を可能とする新たな化学の構築
Project/Area Number |
19J22901
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
川岸 啓人 大阪府立大学, 工学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 1分子制御化学 / 1分子操作 / ナノ流体デバイス / 1分子液滴 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、アトリットル(10-18 L)体積の液滴内に溶質分子を1分子だけ閉じ込めた1分子液滴を作製、操作し、液相中で単一分子を自由自在に制御可能なプラットフォームの構築を目的とする。更に、このプラットフォームを用いることで、液相中での単一分子同士の化学反応研究を目指す。本年度は、昨年度確立したナノ流路内での液液界面形成によるアトリットル液滴作製技術を発展させ、アトリットル液滴移動技術のパラメータ検討を行い、これを確立する予定としていた。 (1)アトリットル液滴移動技術を確立するため、液滴移動における操作パラメータ検討を行った。これにより、操作パラメータと液滴移動の関係を明らかにし、アトリットル液滴移動技術を確立した。 (2)液相中での単一分子同士の化学反応研究へ向け、アトリットル液滴の融合用の特別なナノ流路構造の設計を新たに行った。この設計したナノ流路構造の作製に成功し、アトリットル液滴融合のためのパラメータ検討を行った。これにより、アトリットル液滴が単一分子用の反応器として、異なる単一分子同士の混合操作ができる可能性を示した。 (3)液相中での単一分子同士の化学反応研究へ向けたアトリットル液滴の複合的な操作のため、ナノ流路内ナノ気液界面の形成と応用技術の開発を行った。 (4)液相中での単一分子同士の化学反応研究へ向けたアトリットル液滴の複合的な操作のため、フレキシブルなガラスを用いた機械的なナノバルブの開発を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本年度、アトリットル液滴の操作パラメータ検討を計画していた。昨年度から、先駆けてアトリットル液滴の移動を行うための研究に取り組んでいたこともあり、アトリットル液滴移動のためのパラメータ検討を完了し、得られたパラメータを応用し、アトリットル液滴の融合用の特別なナノ流路構造の設計を行った。この特別なナノ流路構造を実際に作製し、アトリットル液滴融合のためのパラメータ検討を行った。 さらに、当初の予定を越えて、アトリットル液滴の複合的な操作のため、ナノ流路内におけるナノ気液界面の形成と応用、フレキシブルなガラスを用いたナノバルブを開発した。 これらに加え、単一分子同士の反応が制御可能な新しい化学実証に向けた、単一分子検出のための光学系構築にも着手しており、期待以上の研究の進展があったといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、液滴内で単一分子同士の反応を研究できるツールの確立を行う。まず、アトリットル液滴を単一分子用の反応器として圧力で操作を行い、液相における単一分子同士の反応を実証する。さらに反応によって生じる信号を解析し、単一分子同士の反応に関する情報取得を目指す。 想定される課題として、光学検出系の設計は完了しているので、この光学系の実験的な調整とデータ解析法の確立が必要である。この実施のため、次年度は光学実験台の購入を予定している。 さらに、これらの成果に対し、アトリットル液滴の操作、液相における単一分子同士の反応系実証、液相における単一分子同士反応の分析に関わる内容で論文の投稿を予定している。
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