2020 Fiscal Year Annual Research Report
教育における水平的差異が生じさせる格差の生成メカニズムに関する研究
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19J22903
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
成澤 雅寛 東京大学, 総合文化研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2023-03-31
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Keywords | 数理社会学会大会 / インタビュー調査 / 教育達成が子どもの職業に与える影響 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究実績は、【1】前年度の研究結果を別の手法を用いて再検証し、その成果を学会で発表したこと、【2】インタビュー調査の着手をし、研究を行ったことにある。 【1】前年度の研究結果を別の手法を用いて再検証する計画とその成果に関しては、順調に分析が行われ、論文の執筆が行われた。具体的には、従来の受験競争などの業績主義的競争に基づいた地位の配分、すなわち地位の高いものが高い学歴を得て、高い地位に就くという想定が一部の上位階層・階級にのみ当てはまり、そのほかの階層・階級には職業的な親和性を軸に職業学科を媒介として再生産が生じているという前年度の研究成果が当てはまるのではないかという仮説を立て、一般化順序ロジットモデルを用いて検討した。研究の結果、この仮説は妥当であると結論づけられた。この研究成果は前年度の研究成果を別の手法で再検証したものであるとも考えることができ、前年度の研究結果の頑健性を確かめることができたという点で重要な成果であった。研究の結果、前年度の研究結果の妥当性が裏づけられた。そのため、その成果を2021年3月8日、9日に開催された第70回数理社会学会大会にてその成果が発表され、活発な議論が行われた。【2】コロナのためにインタビュー調査に多少の支障が出たものの、インタビュー調査に着手し、いくらかの成果は得られた。実際に、職業科高校に赴き、職業科高校に勤務する進路指導を担当する職業高校の教員を対象にインタビュー調査が行われた。その結果、量的調査のみによっては明らかにできなかった職業科高校が世代間再生産に寄与してしまう原因の一端を見出すことができた。以上のように、本年度は、前年度の研究成果の頑健性を確認して学会発表を行ったこと、インタビュー調査を行ってその成果をまとめたという実績が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、【1】前年度に行った分析を論文として公表する【2】世代間移動および教育の水平的差異における文献の収集を行う【3】インターネット調査の着手【4】調査結果の成果を学会にて発表し、さらにその研究成果を論文として発表する予定であった。しかし、本年度は、特別研究員の体調による問題から4月から8月31日までの間は休養に専念することとなったこと、さらに研究が進んだことによって研究計画の変更に至った。研究を進めているうちに前年度の研究結果を別の手法を用いて再検証する必要性、さらにはインタビュー調査法を用いてそれらの知見を実際の現場の文脈に載せて解釈する重要性に気がついた。そこで、本年度は、【1】【2】ついては計画に変更はなかったが、【3】前年度の研究結果を別の手法を用いて再検証し、その成果を学会で発表すること、【5】インタビュー調査の着手という計画に修正し、研究を行った。【1】に関しては、投稿したものの芳しい結果を得られなかったため、査読結果を元に論文を再修正し、再投稿作業に移る必要がある。すでに、再修正作業には着手しており、次年度の初めには投稿作業に移る予定である。【2】に関しては、教育制度の国際的な違いと関連して本研究課題を論じることが可能であるという着想を諸所の文献から得られた。【3】に関しては、順調に分析が行われ、その成果を2021年3月8日、9日に開催された第70回数理社会学会大会で発表した。【4】に関しては、コロナのためにインタビュー調査に多少の支障が出たものの、いくらかの成果は得られた。以上から、進捗はあったものの、研究全体としては当初の計画よりはやや遅れている。しかし、研究自体は、分析結果の頑健性と解釈という観点から高度化している。また、今年度の研究計画の遅れは、特別研究員の研究計画が頓挫するほどの遅れではない。以上の点から、本年度の進捗状況は、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、主に分析、文献収集、調査に注力した。それに対して、次年度は、本年度の活動を踏まえて、【1】本年度の研究成果を学会発表や論文投稿などの形で発表すること、【2】ひきつづき文献収集を行いながら本研究の議論を国際的に意義のある議論へと発展させること、【3】さらに新たな分析手法を用いて前年度の研究成果をさらに頑健なものにしていくことなどを行なっていく予定である。次年度に関しては、コロナのために海外での活動が困難となることが推察される。そのため、国内での活動が中心となると思われる。 【1】に関しては、本年度に行われた第70回数理社会学会大会で発表された分析結果とインタビュー調査の結果を国内雑誌に投稿する予定である。これらの分析に関しては、すでにほぼ執筆については完了しているため、投稿のための修正と投稿作業を行うのみである。前者に関しては投稿予定の研究雑誌の投稿規定を考慮して冬までに、後者に関しては初夏までに執筆・投稿作業を完了させる予定である。【2】に関しては、本年度に国際的な議論の俎上に乗せる見通しは立ったために、それらの議論をまとめる作業になる。【3】に関しては、本年度で行われた分析が「教育が子どもの職業にどのような影響を与えるか」に焦点を当てたために、次年度は「出身背景が子どもの教育達成にいかなる影響を与えるのか」に焦点を当てて分析する。この分析に関しては、夏までに「出身背景が子どもの教育達成に与える影響」に関する諸研究をまとめ、執筆・投稿作業に移る予定である。このように、次年度は、主に本年度と前年度の研究成果をまとめ、国内の研究雑誌等にて発表することを中心に活動する予定である。
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