2019 Fiscal Year Annual Research Report
分配に関する行動の理論モデルの構築へ向けて -実験研究によるアプローチ-
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19J22904
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
福冨 雅夫 京都大学, 農学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 分配に関する選好 / 経済実験 / グループ行動 / 罪悪感回避 / 内集団ひいき |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、グループ構造の変化が分配に関する行動に与える影響を検証するための経済実験を実施した。実験経済学・心理学における先行研究から、グループは個人に比べて、より利己的(合理的)に行動する傾向にあることが知られている。その理由を、罪悪感回避と内集団ひいきの観点から検証するために、独裁者ゲームと最後通牒ゲームをグループ構造の観点から拡張したゲームを設計し、大学生を対象とした実験室実験を前年度に実施した。本年度はまず実験結果の分析を行い、得られた成果を複数の国内学会及び国際学会にて報告した。これにより、実験デザインにおいて改良すべき点が明らかとなったため、追加の文献調査と実験デザインの修正を行った。その後、大学生を対象とした実験室実験を再度実施し、合計で156人のデータを得た。以上の経済実験の結果より、「分配に関する意思決定をグループの一員として行う場合は、相手(グループ)に対する罪悪感を抱きにくいなる」という仮説が支持された。これらの成果は論文として現在執筆中であり、来年度には国際学術誌へ投稿する予定である。 農山村民を対象としたフィールド実験に関しては、実験協力者へこれまでの調査結果を報告し、中高年層を対象とした予備実験を実施した。京都府南丹市美山町では、前年度に町内の全区長と全住民を対象とした行ったアンケート調査の集計結果を、現地の振興会と支所に報告した。さらに、来年度以降に実施予定のフィールド実験の予備実験として、町内の中高年層を対象に、複数の認知能力テストや独裁者ゲームを実施した。愛媛県久万高原町においては、町役場や森林組合に対して研究の進捗状況を報告し、今後の調査の交渉と打ち合わせを行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定通り、分配に関する行動を検証するための実験室実験の一部を実施した。フィールド実験に関しては、現地との調整や予備実験を行い、来年度以降に予定している実験の準備が順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
分配に関する行動の理論モデルの構築に関しては、グループサイズの変化が分配に関する行動に与える影響を検証できる実験を設計し、大学生を対象とした実験室実験を実施する予定である。フィールド実験に関しては、昨年度のアンケート調査と予備実験の結果をもとに、フィールド実験の準備を引き続き進める。
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