2020 Fiscal Year Annual Research Report
エイズウイルスとヒトの共進化が規定するウイルス流行伝播メカニズムの解明
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19J22914
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
今野 順介 東京大学, 大学院新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | ウイルス / HIV |
Outline of Annual Research Achievements |
YPモチーフ(YP)喪失の要因を明らかにするために、YPを含むペプチドを提示できる18のヒト白血球高原(HLA)をデータベースより選別した。これらのHLAの対立遺伝子頻度を解析した結果、HLA-B53はアフリカ人では非アフリカ人に比べて高い。さらに、HLA-B53によって提示される、YPを含む10アミノ酸残基のペプチドとの結合親和性を推定した。YPを含む10アミノ酸残基のペプチドは、YPを含まないペプチドよりもIC50の値が低いことから、結合親和性が高いことが考えられる。このことから、HIV-1のp6ドメインにおけるYPの喪失はHLA-B53に起因することが考えられる。 PTAPモチーフ(PTAP)をふたつ有していることの意義を調べるために、サブタイプCのPTAPをふたつ有しているでPTAPをひとつ、またはふたつ欠損させた変異体を作製した。2つのPTAPのうちの1つの欠失変異体は野生型と比べ、感染性ウイルスの放出を有意に減少させた。また、単独のPTAPを有する株では、新たに加えると感染性ウイルスの放出を有意に増加した。これらよりPTAPの獲得が感染性ウイルスの放出を促進することが示唆される。 生体内でウイルス複製における各出芽モチーフの重要性を調べるため、両モチーフを有する、サブタイプB株を使用し、野生型、ふたつのモチーフのどちらかまたは両モチーフの変異を有するウイルスをヒト化マウスに摂取し、ウイルス感染動態を調べた。PTAP置換体は、血漿中のウイルスRNA量を有意に低下させ、一方、YP置換体のウイルスRNAは、野生型ウイルスと同等であった。さらに、野生型とYP置換体ウイルスを感染させたマウスの末梢血中のCD4+ T細胞および感染6周目における脾臓中のCD4+ T細胞は、非感染マウス、PTAP置換体、両モチーフ置換体ウイルスを感染させたマウスと比較して有意に低かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
昨年度の研究計画である、アフリカでの流行において、YPを失った原因について解析、PTAPモチーフ獲得のウイルス学的意義の解析、生体内におけるPTAPモチーフ・YPモチーフの機能を調べるため、ヒト化マウスによるウイルス複製能の解析、上記三点において、HIV-1のp6ドメインにおけるYPの喪失はHLA-B53に起因することが考えられること、PTAPの獲得が感染性ウイルスの放出を促進すること、生体内でウイルス複製における各出芽モチーフの重要性を示したことから進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
配列情報上、単独のPTAPモチーフを有する株において生体内におけるモチーフの重要性は明らかになっていない。さらに、PTAPモチーフを新たに獲得した場合、生体内における重要性が明らかになっていない。これらのことを明らかにすることを次年度の目標とし、その結果を含め論文の取りまとめる。
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