2020 Fiscal Year Annual Research Report
神経幹細胞の運命制御におけるリソソームの新規機能の解明
Project/Area Number |
19J22938
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
湯泉 直也 東京大学, 薬学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 神経幹細胞 / 神経発生 / リソソーム / 細胞運命制御 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経系前駆細胞がニューロンへと分化する過程では、細胞内外の調節機構によって、代謝系を担うオルガネラなどの細胞内状態が厳密に制御されている。 我々はこれまでに、マウス成体脳室下帯の神経幹細胞の多くが、胎生期神経系前駆細胞の一部集団に由来することを見出している。これら成体神経幹細胞の胎生期起源細胞においても、オルガネラ状態が特別に制御されている可能性を考えている。そこで、リソソームに着目して解析したところ、リソソームが非常に興味深い発現パターンを示すことを発見した。今後は過剰発現やノックダウンの実験を通して、神経幹細胞の運命制御において、リソソームがいかなる機能を果たし ているかを解明する予定である。 これまでの結果から、リソソーム遺伝子の転写因子であるTFEBの恒常活性型を過剰発現すると、神経系前駆細胞の分化が抑制され、未分化な状態に維持されることが示唆されていた。当該年度においては、この機構を調べるため、恒常活性型TFEBが過剰発現された神経系前駆細胞、および未成熟ニューロンを分取し、網羅的遺伝子発現解析を行なった。恒常活性型TFEBによって発現が上昇した遺伝子のうち、神経系前駆細胞において未成熟ニューロンよりも高発現を示す遺伝子として、Slc15a4というリソソーム因子に着目した。Slc15a4はリソソーム膜上に存在するトランスポーターで、リソソーム内腔から細胞質へ複数のアミノ酸やペプチド短鎖を排出することが知られる。この因子の発現抑制により、神経系前駆細胞の割合が減少したことから、リソソーム因子による細胞内代謝物制御が神経系前駆細胞の維持に重要であることが示唆された。さらにこの結果から、実際にTFEBの下流であるリソソーム因子が神経系前駆細胞の維持に重要な役割を果たすことを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当該年度においては、恒常活性型TFEBが過剰発現された神経系前駆細胞、および未成熟ニューロンを分取し、網羅的遺伝子発現解析を行なった。恒常活性型TFEBによって発現が上昇した遺伝子のうち、神経系前駆細胞において未成熟ニューロンよりも高発現を示す遺伝子として、Slc15a4というリソソーム因子に着目した。Slc15a4はリソソーム膜上に存在するトランスポーターで、リソソーム内腔から細胞質へ複数のアミノ酸やペプチド短鎖を排出することが知られる。この因子の発現抑制により、神経系前駆細胞の割合が減少したことから、リソソーム因子による細胞内代謝物制御が神経系前駆細胞の維持に重要であることが示唆された。さらにこの結果から、実際にTFEBの下流であるリソソーム因子が神経系前駆細胞の維持に重要な役割を果たすことを示した。
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Strategy for Future Research Activity |
リソソームのどのような機能が神経系前駆細胞の運命制御を担っているのか、またいかにリソソーム量の変化が制御されているのかについて調べる予定である。リソソームは近年、タンパク質などの分解のみならず、幅広い機能が知られてきている。これらの機能についても検討を行うつもりである。
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