2020 Fiscal Year Annual Research Report
特異な体内動態を実現するタンパク質修飾siRNA内包ナノカプセル
Project/Area Number |
19J22946
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木幡 愛 東京大学, 工学系研究科, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 分子糊 / 光制御 / 核酸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、タンパク質修飾siRNA内包ナノカプセル合成の過程で発見した光反応性分子糊を応用し、新たな核酸の被覆/修飾技術を開拓する。これまでに、この光反応性分子糊は核酸へ強く接着し、光照射により近くに存在する分子と共有結合を形成することが明らかとなっている。 当該年度は、この光反応性分子糊をDNAアプタマーへと導入し、光照射によってアプタマーを標的タンパク質上で固定化することに成功した。DNAアプタマーはその標的特異性の高さから、抗体に代わる合成医薬として注目されているが、DNAアプタマー/標的タンパク質間の非共有結合的な相互作用は生理的条件下において十分とは言えず、実用化に課題が残る。本研究では、特に、ヒト肝細胞増殖因子(HGF)とHGF受容体(c-Met)間の結合を阻害するDNAアプタマー(SL1)に着目した。c-Metを発現している培養細胞へSL1と光反応性分子糊を添加し光照射をすることによって、SL1をc-Met上へ共有結合的に固定化した。HGF/c-Met相互作用は細胞遊走を誘導することが知られているため、SL1および分子糊を用いて細胞遊走を光によって制御することができた。また、HGF/c-Met相互作用により引き起こされるc-Metのリン酸化阻害を、ウェスタンブロッティングによって確認している。この光反応性分子糊を用いることにより、DNAアプタマーを用いた治療の時空間的な制御を可能にするものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究者自身がこれまでに開拓してきたsiRNA内包ナノカプセル開発で得られた知見に基づき、DNAアプタマーの修飾および標的タンパク質上での固定化を可能にする分子を新たに合成した。当初予定していたsiRNAの体内動態制御を可能にする輸送体とは異なる形ではあるものの、この光反応性分子糊は従来のDNAアプタマーが抱えていた課題を乗り越え、核酸医薬の可能性を拡げる重要な技術となりうる。
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Strategy for Future Research Activity |
光反応性分子糊を用いて、核酸やタンパク質といった生体高分子のさらなる修飾技術開発に取り組む。当該年度で開発した光反応性分子糊は核酸へ強い接着力を持つが、タンパク質との結合形成も確認されている。動的なタンパク質構造体を光照射により固定化し、生理的条件下においても安定なものにすることで、ドラッグデリバリーを指向したバイオマテリアル開発に挑戦する。
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