2020 Fiscal Year Annual Research Report
元代都城周辺の墓制にみる北方遊牧民文化の流入ー元墓の構造分析を中心にー
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19J22949
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| Research Institution | Waseda University |
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Principal Investigator |
ゴ シンイ 早稲田大学, 文学学術院, 特別研究員(DC1)
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| Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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| Keywords | 遼墓 / 金墓 / 元墓 / 横穴式石室 / 三次元計測 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は本研究課題の二年目に当たり、一年目より継続して主目的の①遼金元における墓制の研究、および副目的の②墓室を対象としたSfM/MVSを利用した三次元計測調査の方法と三次元データを使用した分析法の確立、の２点を中心に研究を進めた。
①については、発掘簡報や報告書から発掘報告を悉皆的に収集してデータベース化し、集めたデータを元に分析を行った。まず、遼代の埋葬施設の構造について平面構造・立体構造双方から分析を行い、特に２室以上の墓室を持つ複雑な構造を持つ多室墓について、その構造上の変遷案を提示した。従来の平面的な分析に加え、立体的な構造を対象にするという新たな分析方法を提示し、こ金墓・元墓の分析を進めているところである。また、遼、金、元のせん室墓に特徴的な「倣木結構」についての分析の一環として、徳島県立鳥居龍蔵記念博物館に所蔵されている遼代の瓦等について資料調査を行った。
②については、2019年度に調査を実施した群馬県藤岡市所在の横穴式石室のデータを整理し、調査報告の作成を進めた。従来型の実測図の作成に加えて、三次元モデルを使用 した石室の任意位置における横断面、縦断面図の作成、石室壁面の内傾度の変化の図示、墳丘の立体構造と石室 構造を合わせた分析など、三次元計測を活かした遺構の図面提示や新たな分析視点の提示など、多くの成果が得られた。これらの成果をもとに、埋葬施設の構造の分析をより洗練させていきたい2020 年度末に実施予定であった同市の諏訪神社古墳、諏訪神社北古墳の横穴式石室の計測調査が 2021 年度に延期となったため、それらの石室について調査を実施した後に、『群馬県藤岡市横穴式石室の三次元計測調査』として報告書にまとめる予定である。
以上をまとめると、二年目は遼金元墓についての分析作業を進め、特に方法論の検討面で大きな成果を得ることが出来た。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来の計画では昨年度に引き続き、中国での博物館見学や遼金元時代の墓葬遺跡の踏査などを実施し、並行して日本で横穴式石室の三次元計測調査を行う予定であった。しかし新型コロナウイルスの感染拡大により国外・国内ともにフィールド調査が難しい状況が続いたため、2020年度はデータ収集と論文・報告書の作成に注力した。
遼金元における墓制の研究については、遼代、金代、元代の各時期の埋葬施設の構造に着目して分析を進めており、本年度は前年に引き続き遼代のものを主な分析の対象とした。並行して進めている横穴式石室の調査より着目点を得て、従来行われていた平面構造の分析に加えて、「立体構造」の検討を行い、多室墓の構造的な変遷を示した。今後も立体構造に着目して金墓の分析、元墓の再分析を行っていく予定である。また遼金元代の前段階として、長江以北の地域を中心に唐末・五代の埋葬施設を収集し、遼墓との比較研究も進めている。
②墓室を対象としたSfM/MVSを利用した三次元計測調査の方法と三次元データを使用した分析法の確立については、2019年度に実施した群馬県藤岡市に位置する霊符殿古墳、平地神社古墳、皇子塚古墳、喜藏塚古墳のデータ整理・分析・報告作成を進めている。従来型の実測図の作成に加えて、三次元モデルを使用した石室の任意位置における横断面、縦断面図の作成、石室壁面の内傾度の変化の図示、墳丘の立体構造と石室構造を合わせた分析など、三次元計測を活かした遺構の図面提示や新たな分析視点の提示など、多くの成果が得られた。本年度に予定していた同市諏訪神社古墳、諏訪神社北古墳の調査については、日程を再調整し来年度に改めて実施する予定である。
以上、フィールド調査が実施できていないものの、収集したデータの分析については進めているため、研究全体の進捗については「やや遅れている」と判断した。
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| Strategy for Future Research Activity |
現在までの進捗状況で記したように、本研究は予定していたフィールド調査が実施出来ていない点で当初の計画よりやや遅れている。そのため、三年目はフィールド調査と論文執筆、成果報告をバランスよく行なっていく必要がある。
具体的には、①遼金元における墓制の研究については、本年度に遼墓の分析成果を論文という形で発表したので、今後は引き続き平面構造、立体構造の双方に着目して金墓の分析、元墓の再分析を進め、遼金元代における埋葬施設の構造の変遷をまとめていきたい。また、二年目に実施できなかった中国の墓葬遺構の踏査・博物館調査（寧夏回族自治区に所在する西夏王陵、河北省に所在する宣化遼墓遺跡群、内蒙古自治区に所在する慶陵、洛陽古墓美術館に移築保存された磚室墓の調査など）などを行い、現地の遺構観察で得た知見を埋葬施設の構造分析に加える予定である。
②墓室を対象としたSfM/MVSを利用した三次元計測調査の方法と三次元データを使用した分析法の確立については、二年目に実施予定であった群馬県藤岡市の諏訪神社・諏訪神社北古墳の横穴式石室調査を実施し、2019年度調査分と合わせて報告する。そして埋葬施設研究の方法論を整理し、主目的である遼金元墓の研究に生かしていきたい。
以上、三年目は三年間の調査成果、分析成果を総括する研究活動を行うと同時に、二年目に実施出来なかったフィールド調査を実施していく予定である。来年度も新型コロナウイルス流行の影響により海外渡航ができない状況が有りうるが、その場合は今年度に引き続き、報告書の資料を活用した分析作業や、日本国内の調査に注力する予定である。
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