2020 Fiscal Year Annual Research Report
視聴覚統合の神経基盤:齧歯類スナネズミをモデルとした研究
Project/Area Number |
19J22981
|
Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
伊藤 優樹 同志社大学, 生命医科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
|
Keywords | 感覚統合 / スナネズミ / 視聴覚 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、視覚情報と聴覚情報を統合する神経メカニズムの解明である。本年度は、モデル動物としてスナネズミを対象に、感覚統合の3つの原則を行動実験で評価した。加えてヒトを被験者として、音の3要素が統合に与える影響を検討した。 スナネズミを対象とした実験では、頭部固定下のスナネズミに刺激検出課題を行わせた。その結果、視覚単独刺激・聴覚単独刺激に対する応答よりも視聴覚刺激に対する反応率は高かった。また、個体毎に刺激強度を調整する実験系も構築できた。個体ごとに適切な強度の刺激を用いることで、刺激検出課題におけるスナネズミの行動は時間法則と逆効力の法則に従い、行動性能(刺激検出率の上昇、反応時間の短縮)が向上することが明らかになった。 ヒトを対象とした実験では、音圧情報と周波数情報がダブルフラッシュ錯覚の生起頻度に与える影響を検討した。2回目に提示する聴覚刺激の音圧が1回目の音圧よりも小さくなるほどダブルフラッシュ錯覚が起きにくくなった。また、聴覚刺激の明瞭度がダブルフラッシュ錯覚の生起頻度に関連があることが示唆された。周波数情報に着目すると、2回提示する聴覚刺激の周波数差が大きいほどダブルフラッシュ錯覚が起きにくかった。さらに、1回目に提示した聴覚刺激の周波数成分が2回目に提示する聴覚刺激に含まれている方が2回目に提示する聴覚刺激の周波数成分に含まれていない場合に比べ錯覚は生じにくかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当該年度は、スナネズミを被験体として統合の3原則が行動応答に与える影響を検討できた。その結果、刺激検出課題では、時間法則と逆効力の法則に従い刺激の検出率が増加し、反応時間が減少した。一方、空間法則は行動に影響を与えなかった。これらは、ヒト研究で得られた成果と比較的一致していた。加えて、ヒトを対象とした研究では、音圧情報と周波数情報が感覚統合に与える影響を調べることができた。一方、スナネズミに対してはダブルフラッシュ錯覚の行動実験も続けていたが、COVID-19に伴う実験中断のため、予定より遅れが見られる。
|
Strategy for Future Research Activity |
次年度も引き続き、頭部を固定したスナネズミを対象に行動実験を進める。加えて、課題遂行中の神経活動の記録も行う。一方、COVID-19による大学での実験中断が懸念されるため、麻酔下での神経応答記録も予定している。ヒトを対象とした研究では、より周波数に注目して研究を進めていく。具体的には、個人が持つ周波数の弁別能力と錯覚の起きやすさの関係性を調べる。
|
Research Products
(8 results)