2019 Fiscal Year Annual Research Report
応力発光性分子プローブを利用する高分子材料中の微小応力の可視化
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19J23009
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
加藤 颯太 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 高分子溶液の凍結 / 高分子の結晶化 / 共焦点顕微鏡観察 / テトラアリールスクシノニトリル / 学術論文の表紙掲載 / 球晶の成長過程 |
Outline of Annual Research Achievements |
高分子材料に機能性を付与する研究として、力学的刺激に応答して色変化を示す「メカノクロミック材料」があり、材料の損傷検知などへの応用に期待されている。力に応答して色変化を示す分子骨格を高分子鎖中に導入する設計である。本研究では、研究室で開発されたテトラアリールスクシノニトリル(TASN)に着目した。TASNは力に応答して中心C-C結合が均一開裂し桃色着色と黄色蛍光を示すラジカル種を発生するため、色変化のみならず、電子スピン共鳴測定による発生ラジカルの直接定量や蛍光顕微鏡による直接的観察が可能である。 そこで力の伝達メカニズムの検出対象を「高分子溶液の凍結」と「高分子の結晶化」の2点に絞った。「高分子溶液の凍結」では、過去にTASNを有する架橋ポリウレタンゲルの凍結により、溶媒の凝固する力を利用し凍結誘起メカノフルオレッセンスを発現させた。今年度は、さらに架橋構造を最適化することで発生ラジカルを最大化し、冷却過程で生じるラジカルを利用した新規有機反応への展開に成功した。冷却下での反応を証明するために長い時間を費やしたが、蛍光色素の重合性モノマーとの反応性を評価することでその証明に成功した。本成果はすでに論文として執筆が完了し投稿準備に入っている。 「高分子の結晶化」では、TASNを有する結晶性高分子の結晶化ひずみの力を利用し結晶化誘起メカノフルオレッセンスを発現させ、等温結晶化過程における蛍光顕微鏡観察により球晶の成長を捉えることに成功した。昨年度までは達成できなかった、等温結晶化過程における球晶成長を蛍光顕微鏡で追跡することに成功し、高分子の一次構造が結晶化歪みに与える影響を定量的に明らかにした。本成果もすでに論文として執筆が完了し投稿準備に入っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
学会発表では、博士課程に進学する以前から多数受賞していますが、今年度も受賞を重ねています。 今年度は当初の計画に従って期待通りに研究が進展し、本研究の最終目標としている「高分子溶液の凍結」と「高分子の結晶化」という二つの力学的刺激を可視化させる研究において着実な進捗が見られています。具体的には第一著者として執筆した論文が表紙に選出されました。さらにこれを発展させた内容について、国際学術誌に投稿する論文を2本執筆し、投稿準備段階に入っています。またこれらの論文に加え、国際的な共同研究成果も国際学術誌に掲載されました。今後も新たな分野の開拓とさらなる研究の発展が見込まれます。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、低温下での反応に関する独創的な知見や結晶性制御により力学物性の損失を減少させる技術へと発展する可能性を秘めている。現在は、「高分子溶液の凍結」と「高分子の結晶化」をより詳細に解析するツールとしてTASNの一部を共有結合で連結させた新規メカノフォアの創製を行なっており、材料の力学特性にまで範囲を拡張する。
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