2019 Fiscal Year Annual Research Report
X線-MRI造影性と抗菌性を有す血管ステント用金銅アルミ銀超弾性生体材料の開発
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19J23030
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
鳥谷部 綾乃 東京工業大学, 物質理工学院, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2019-04-25 – 2022-03-31
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Keywords | 超弾性 / 形状記憶 / マルテンサイト変態 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,X線,MRI造影性と超弾性を兼備する革新的なステント材料の開発を目指し,AuCuAl合金を研究対象としている.本合金は良好なX線,MRI造影性を示すと考えられるが,十分な超弾性を示す組成の合金では動作温度が体温よりも高く,これを引き下げる必要がある.これまでの研究結果より,特定の第四元素の添加により,動作温度を制御できる可能性が指摘されたが,その詳細なメカニズムは不明なものが多い.ここで,超弾性挙動,つまりオーステナイト-マルテンサイト相間の変態を考えるとき,結晶構造は重要な因子である.しかし本合金系のマルテンサイト相の結晶構造については様々な意見があり,詳細は不明である.第四元素添加による動作温度の引き下げのメカニズムを解明するためには,まずは上記について明白にする必要がある.そこで,本年度は第一にX線回折および透過型電子顕微鏡観察によるマルテンサイト相の構造解析,第二に単結晶圧縮試験による応力誘起マルテンサイト変態挙動および,塑性変形挙動の解明を行うことを目的に研究を行った. 結果として,本年度は各種試験に使用するサンプルの作製法を確立することができた.透過型電子顕微鏡観察用のサンプルについては,当初電解研磨による作製を試みたが,本合金の耐腐食性の高さから困難であった.そこで,Gaイオン収束ビームとArイオンによるミリングを組み合わせ,最適条件を設定することで,観察可能にまで薄片化したサンプルを得ることができた.単結晶圧縮試験用のサンプルに関しては,溶体からの冷却速度を制御することで簡便に作製する手法を確立した.本合金は粘度が高いことや,コストの観点から,通常用いる単結晶作製方法の適用は困難である.簡便な作製法で単結晶を得られたことは,今後の研究を発展させる上で大きな成果であると考える.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では,本年度内に各種測定および解析を終了する予定であったが,サンプル作製が順調に進まず想定以上の時間を費やしてしまった.しかし,鬼門と思われた単結晶圧縮試験片の作製法を確立できたため,これは大きな進捗であったと考えている.のちに行う試験については,環境等に問題がなく,速やかに実行できると思われるため,本研究の進度はおおむね良好である.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の活動では,透過型電子顕微鏡観察用サンプル,およびバルク単結晶の作製方法を確立した.次年度以降は作製したサンプルを用い各種測定・解析を行う.X線回折測定,リートベルト解析によるマルテンサイト相の結晶構造を精密決定後,透過型電子顕微鏡観観察により,マルテンサイト相の変調構造の有無の決定を行う.次に,バルク単結晶を用いた圧縮試験を行うことで,本合金系のマルテンサイト変態挙動,および塑性変形挙動を明らかにする.
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